掲載日 2022年01月28日

株式会社フォーステック

【提供目的】
  • 事業・業務の見える化
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング
  • 故障や異常への迅速な措置
  • 収集情報を活用した新規事業の発掘

【活用対象】

  • 企業顧客
  • その他(商店会などの組合)

IoT導入のきっかけ、背景

 当社は、IoT化されたスマートゴミ箱SmaGO(スマゴ)の設置を通して、ゴミ回収の効率化、費用削減を実現し、街の美化や資源のリサイクルに取り組んでいるベンチャー企業である。

 1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件以降、日本では歩道などに設置される街中のゴミ箱がなくなってしまった(公園や公共施設には若干設置されている)。欧米など海外の主要都市では、ブロックごとにゴミ箱が設置されていることが多い。日本は街中でゴミを捨てることができない、世界的に珍しい国と言える。

 それでも日本人の綺麗好きな国民性のおかげで、これまでは街中にゴミが溢れるようなことは少なく、何とかなっていた。しかし、こうした状況も変化している。タピオカブームに代表されるテイクアウトなどの食べ物を外で楽しむライフスタイルの変化、コロナ禍で現在は落ち込んでいるが海外からの観光客の増加などによって、街中で発生するゴミの量が増えている。

 その一方で、25年以上街中にゴミ箱がない状態が続いてしまったため、社会全体でゴミ箱を維持管理する仕組みがない。そのため、例えば商店街に隣接した歩道にゴミ箱を設置したい場合、商店街振興組合(商店会)などが「設置主」となりゴミ箱の設置費用やゴミの回収費用を負担する必要がある。

 こうした中、都内でも有数のお出かけ・観光スポットである表参道では、表参道商店街欅会(ケヤキ会)が設置したゴミ箱のゴミ回収が追い付かず、ゴミが溢れてしまう問題に悩まされていた。ゴミ箱の数を増やしたくても、ゴミ回収費用の負担が重く実現できなかったのである。

 そこで当社は、海外で設置が進んでいたスマートゴミ箱を日本に導入し、さらに、企業との協賛によってゴミ箱の維持コストを軽減するというユニークな仕組みを付加することによって、持続可能な街の美化を実現した。
 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL

・サービス名:IoTスマートリサイクルボックスSmaGO(スマゴ)
・関連URL:https://forcetec.jp/
 

サービスやビジネスモデルの概要

 SmaGOはIoTを活用したスマートゴミ箱で、「Smart action on the GO」の略称である。Smart action on the GOという言葉には、「環境に良いことを続けていこう、このために街のゴミを回収する仕組みを日本でも作ろう」という当社の思いを込めている。

 スマートゴミ箱としてのSmaGOの特徴は以下の通りである。(図-1を参照)

  • ソーラー発電で動作するため環境にやさしく電気代も不要
  • ゴミ箱内にゴミが溜まると自動的におよそ5倍に圧縮することで限られたゴミ箱のスペースを最大限活用し、ゴミの溢れを防止
  • 通信機能でゴミの堆積状況を管理・分析することによってゴミ回収コストを削減

 冒頭にも述べた通り、ゴミ箱を維持・管理するためには設置主にゴミの回収費用が重くのしかかる。この課題は海外でも同じであるが、海外では自治体や大学などの比較的大きな歳入基盤がある設置主がゴミ回収費用を負担している。これに対して、日本では商店街振興組合(商店会)などがこの費用を負担している。組合費で運営されている組織にとってこうした負担は大きい。そこで、SmaGOを広告メディアとして活用し、協賛企業の広告を掲載することでゴミの回収費用を軽減している。

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図-1  SmaGOの特徴
(出所:フォーステック提供資料)
 

内容詳細

 SmaGOの製品概要と導入事例を紹介する。

(1) SmaGOの製品概要

 SmaGOにはインターネット通信機能があり、ゴミの堆積状況を逐次クラウドに送信している。このデータを基に、地図上でゴミの堆積状況をリアルタイムに確認できる。ゴミ箱が溢れそうになったら管理者にアラートする機能もある。加えて、堆積状況分析・予測機能やエリア別の分析機能を使うことによって、ゴミの回収を、従来の全ゴミ箱を定期的に巡回するルート回収から、ゴミが溜まっているところだけを対象としたピンポイント回収にすることで回収コストを下げることができる。(図-2を参照)

 SmaGOには圧縮ありタイプと圧縮なしタイプがある。現状は可燃ごみは圧縮あり、ペットボトルや瓶・缶類は圧縮なしを使用している。ペットボトルはキャップをした状態で捨てられることが多く、その場合、空気が抜けず圧縮ができないため、瓶・缶類と共に、圧縮なしの状態で分別回収している。(図-3を参照)

 扉へのリモートロック機能の装備によるセキュリティ対策や、防炎フィルムを使った火災対策も行われている。

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図-2  SmaGOの管理機能
(出所:フォーステック提供資料)

 

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図-3 SmaGOのタイプ
(出所:フォーステック提供資料)
 

(2) 表参道・原宿エリアの導入事例

 冒頭に記載した表参道商店街欅会様の課題を解決するために、表参道駅から原宿駅までの道沿いにSmaGOを13箇所34台設置し、2020年10月8日より本格運用を開始した。(写真-1を参照)

 2020年10月の導入時点では、森永製菓株式会社様から協賛をいただき、同社の広告をSmaGOに掲載することによってゴミの回収費用やSmaGOの清掃費用などの維持管理費用にあてている。2022年1月時点では森永製菓との広告契約は終了しており、全国清涼飲料連合会の広告が掲載中である。

 写真-1に示す通り、SmaGO導入前は表参道商店街欅会が従来型のゴミ箱を設置していた。欅会の会員が1日に3回ゴミを回収(ゴミ袋を交換)していたが、それでもゴミ箱が一杯になり溢れたゴミが周囲に積み上げられてしまう状況であった。SmaGOの導入後は写真のようにゴミは溢れていない。SmaGOが持つ圧縮機能によって、資源回収業者に委託した1日に1回のゴミ回収でゴミの溢れがなく運用できるようになったのである。この回収費用は広告費で賄うことができている。欅会の会員も自らゴミ箱をまわってゴミを回収する負担から解放された。

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写真-1  表参道・原宿エリアへの導入事例
(出所:フォーステック提供資料)
 

(3) 米国フィラデルフィア市の導入事例

 フィラデルフィア市は、市内に700個のゴミ箱を設置して管理していた。このゴミ回収には33人のスタッフを要し、週17回のゴミ回収のために年間230万ドルの費用がかかっていた。このゴミ問題解決のために、市長が中心となりSmaGOと同じスマートゴミ箱(*1)の導入を進め、ゴミの回収回数を90%削減、回コストを70%削減することができた(図-4を参照)

(*1) SmaGOは米国BigBelly Solar社が開発した製品で、フィラデルフィア市の導入事例を含めて、海外ではBigBellyという名前で販売されている。日本では、当社がSmaGOという名前で展開している。

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図-4  米国フィラデルフィアの導入事例
(出所:フォーステック提供資料)

 

街と企業と人々が一体となって参加する環境活動

 街中で出たゴミは、様々な形で地球環境に影響を与えている。昨今、海洋ゴミがウミガメに絡みついた映像を目にすることがあるが、年々深刻化している海洋ゴミの8割は、街に捨てられたゴミが流れ出たものとされている。雨が降った際に路上のゴミが川や水路を経て海に流れ込んでいるのである。こうした社会課題に対して、SmaGOを用いて街中にゴミを散乱させず回収できる仕組みを作りたいと考えている。

 その第一弾がスマートゴミ箱「SmaGO」の普及展開である。冒頭に示した通り、日本はゴミ箱の設置や維持管理の仕組みが海外と異なるため、スマートゴミ箱を導入するだけでは持続できない。そのため、協賛企業による広告モデルを組み合わせることによって維持管理コストを軽減して持続可能な形とした。

 SmaGOの次の展開として、ゴミ回収の効率化だけにとどまらず、ゴミ回収・処理・再生利用などの社会課題に対して、企業や自治体が協創したサーキュラーエコノミーの実現を目指している。例えば、SmaGOで集めたゴミを協賛企業がリサイクルし、地域の産品として観光地で販売するゴミの地産地消が考えられる。このために、電通株式会社と業務提携して共創型ビジネスモデルの構築や、マーケティング・コミュニケーション戦略の強化を図っている。
 

取り扱うデータの概要とその活用法

  • ゴミの量(赤外線センサーでセンシング)
  • ゴミを圧縮した回数
  • 発電量、蓄電量
  • ゴミ箱を開けた回数、など

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • 日本において街中にIoTゴミ箱が全くない0(ゼロ)の状態からスタートし、0を1にすることに苦労した。

  • SmaGOを持続可能とするために広告モデルが必須であったが、自治体が管理する歩道は景観条例などで広告が規制されている。そのため、自治体と折衝して、SmaGOの広告は街の景観や環境の改善に役立つことを理解いただき、最終的に規制の対象外となったがこの手続きに時間を要した。

  • 表参道のケースのように、一度導入されると成功事例として自治体や地域の方に評価していただき勢いがついた。
     

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • 本製品は、海外ではBigBellyという名前で展開しているが、日本はゴミに関しては世界と異なる発展を遂げているため、従来のBigBellyの売り方では普及しないと考えた。そのために名前をSmaGOとし、広告の導入などビジネスモデルも工夫した。

  • SmaGOにはペダルを踏むことで扉を開閉するオプション機能がある。この機能は持ち物で手が塞がっている際の利便性を考慮して考案されたものであるが、コロナ禍の感染症対策にも寄与している。(図-5を参照)

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図-5 ペダル開閉機能
(出所:フォーステック提供資料)

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 IoT機器は点で置いても効果が出にくい。例えば、SmaGOの設置場所を表参道だけでく、渋谷区全体に広げるとより効率化ができる。そのため、SmaGOの設置場所を点から面に広げていきたい。
 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 既にゴミのリサイクルシステムを持っている飲料メーカーと組んでゴミの資源化に取り組みたい。
 

将来的に展開を検討したい分野、業種

 ロボティクスの技術を持っている企業と連携したい。

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本記事へのお問い合わせ先

株式会社フォーステック広報 緒方

e-mail :  info@forcetec.jp