掲載日 2025年05月08日

 

ヤマトシステム開発株式会社

【事例区分】
  • 企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
  • 社会課題解決の取り組み

【関連する技術、仕組み、概念】

  • IoT
  • DX
  • LPWA

【利活用分野】

  • 流通・小売
  • 情報通信サービス
  • 金融・保険
  • 防犯セキュリティ
  • 建設・設備
  • 運輸・交通
  • 公共

【利活用の主な目的・効果】

  • 生産性向上、業務改善
  • サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 ヤマトシステム開発株式会社(YSD)(以下、当社)は、1973年にヤマトホールディングスのコンピュータ部門を分社化して設立された。設立当初から、貨物輸送に関するオンラインシステム「NEKOトータルシステム」などを開発し、物流業界のIT化を牽引してきた。しかし、近年の情報漏洩や盗難などのリスクの高まりに対応し、重要書類や高価値物品の輸送におけるセキュリティ強化が求められるようになり、特に、試験問題や医薬品などの輸送において、紛失や盗難のリスクを最小限に抑えることが課題となっている。また、このような物品を輸送する顧客サイドの人手不足が深刻化しており、効率的な輸送方法の確立も急務となっている。

 当社は、これらの課題解決を促進するために、前サービスのセキュリティBOXが抱えていた重くてかさばるなどの問題を解決するIoT技術を活用したセキュリティmoduleサービスの開発に着手した。

 ビジネスパートナーとの協力により、技術的なハードルをクリアし、2021年4月にサービスを開始している。このサービスは、リアルタイムでの位置情報取得や、インターネットを介した鍵の管理が可能であり、輸送中のセキュリティを大幅に向上させている。

 なお、このサービスは、一般社団法人日本クラウド産業協会の第18回ASPICクラウドアワード2024のIoT部門において、総合グランプリを受賞している。

関連URL:https://www.aspicjapan.org/event/award/18/index.html

 

事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

セキュリティmoduleサービス

関連URL:https://www.nekonet.co.jp/service/securitybox

サービスやビジネスモデルの概要

 当社のセキュリティmoduleサービスは、南京錠型のデバイスに通信機能を持たせ、インターネット上で鍵の管理ができるサービスである。このサービスは、輸送中の荷物に取り付けることで、リアルタイムでの位置情報取得や、インターネットを介した鍵の管理が可能となっている。(図1参照)提供形態はライセンス制で、現在7000台が稼働中である。

 このサービスは、特に高価値物品や重要書類の輸送において、セキュリティを強化するために設計されている。例えば、試験問題の輸送や医薬品の輸送など、紛失や盗難のリスクが高い用途での利用が想定されている。また、リアルタイムでの位置情報取得により、輸送中の荷物の追跡が容易になり、輸送の透明性が確保される。

 

図1:セキュリティmoduleサービスの概要(出所:ヤマトシステム開発提供資料)

ビジネスやサービスの内容詳細

このセキュリティmoduleサービスは、以下のような機能を提供している。(図2参照)

・リアルタイム位置情報:
 複数携帯電話基地局の電波による位置推定やセキュリティmoduleがある場所の周辺にあるWi-Fi基地局の位置情報を利用して輸送中の荷物の位置をリアルタイムで推定している。これにより、荷物がどこにあるかを常に把握することができる。

・インターネットを介した鍵の管理:
 鍵の開閉をインターネット上で管理できるため、輸送中であっても開錠者を変更することが可能となっている。

・開錠履歴の記録:
 誰がいつどこで鍵を開けたかの履歴を記録し、6ヶ月間保存している。これにより、輸送中のセキュリティを強化し、万が一のトラブル時にも履歴を確認することができる。

・位置情報の精度向上:
 携帯電話基地局の電波だけでなく、Wi-Fi情報を利用することで、GPSが使えない建物内やトラック内でも位置情報を取得しやすくなっている。これにより、輸送中の荷物の位置をより正確に把握することができる。

・機内モードの自動切り替え:
 飛行機に乗せる際には空港の近くで留まっていることの検知、それから空港近くの拠点でセキュリティmoduleを検知、という2段階の方法で自動的に機内モードに切り替わり、飛行機から降りた際には航空便を受け取る地点で自動的に機内モードが解除される。これにより、輸送中の位置情報取得を途切れなく行えるようにしている。

図2:セキュリティmoduleサービスの利用イメージ(出所:ヤマトシステム開発HP掲載)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

セキュリティmoduleサービスでは、下記のデータを取り扱っている。

  • 位置情報(複数携帯電話基地局からの電波及びWi-Fi情報を利用)
  • 開錠履歴(誰がいつどこで開けたか)
  • 利用者情報(カードID、名前)

 

事例の特徴・工夫点

価値創造

 セキュリティmoduleサービスにより、輸送中の荷物の紛失や盗難のリスクが低減できる。特に、リアルタイムでの位置情報取得や、インターネットを介した鍵の管理などにより、きめ細かなレベルで輸送の安全性が確保されている。例えば、試験問題の輸送においては、試験会場に到着するまで鍵を開けることができないように設定することで、試験問題の漏洩リスクを低減している。

事業化時に苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 セキュリティmoduleサービスの開発において特に苦労した点は、位置情報の精度向上と機内モードの自動ON/OFF機能の開発である。位置情報の精度向上については、携帯電話の電波だけでなくWi-Fi情報も利用することで、建物内やトラック内でも位置情報を取得しやすくする工夫を行っている。また、機内モードの自動ON/OFF機能については特許を取得している。これらの課題を解決するために約1年を要している。

重要成功要因

 セキュリティmoduleサービスの成功の要因は、徹底的に顧客の声を聞き、ニーズに応じた機能を開発したことである。開発初期から顧客との対話を重視し、実際の利用シーンや課題を詳細にヒアリングすることで、顧客が求める機能を的確に把握した。また、ビジネスパートナーとの協力により、技術的なハードルをクリアし、迅速に製品化することができた。さらに、ヤマトグループの物流ネットワークを活用することで、広範な顧客基盤に対してサービスを提供することができた。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 セキュリティmoduleサービスの開発においては、自社で開発した最新のIoT技術を活用している。具体的には、位置情報の取得や鍵の管理機能を実現するために、携帯電話の電波やWi-Fi情報を組み合わせたシステムを構築している。また、他社製品の技術も参考にし、最適なソリューションを導入している。例えば、位置情報取得の精度向上のためにGoogleのWi-Fi情報取得機能を活用し、機内モードの自動切り替え機能については航空法に準拠したシステムを開発している。 

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦

 現在の課題は、通信費用の削減とさらなるセキュリティ強化である。特に、IoT機器の通信費用が高額になることが多く、スモールスタートを希望する顧客にとっては負担となっている。また、将来的には、ドローンを活用した医薬品の輸送での活用など、新たな挑戦を検討している。ドローン輸送においては、GPSや温度管理機能を搭載したセキュリティモジュールを活用し、医薬品の品質を保ちながら安全に輸送することを目指している。

技術革新や環境整備への期待

 技術革新により、より高精度な位置情報取得や低コストでの通信が可能になることを期待している。例えば、ローラ(LoRa)通信技術を活用することで、低コストで広範囲の通信が可能となり、IoT機器の導入コストを削減することができる。また、法整備により、ドローン輸送の規制緩和が進むことを望んでいる。これにより、ドローンを活用した新たな物流ソリューションの提供が可能となることを期待している。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 今後は、輸送中の温度管理や振動検知など、さらなる機能強化を図りたいと考えている。これにより、医薬品や精密機器などの高価値物品の輸送において、品質を保ちながら安全に輸送することが可能となる。また、自治体や国土交通省との連携を強化し、公共インフラの維持管理にも貢献したいと考えている。具体的には、巡回するトラックを活用して水道管の老朽化検知や道路の維持管理など、公共インフラの分野での展開を検討している。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 将来的には、他企業との連携により、さらなるサービスの拡充を図りたい。例えば、自治体や公共機関との協力により、インフラの維持管理に関するデータを収集し、分析することで、効率的なメンテナンスを実現することができる。また、物流業界以外にも、医療や製造業など、他業種への展開も視野に入れている。これにより、幅広い分野でのIoTソリューションの提供を目指したい。

 

本記事へのお問い合わせ先

ヤマトシステム開発株式会社 ソリューション事業本部 担当:碇 貴史

e-mail : skyumo@nekonet.co.jp

URL :   https://www.nekonet.co.jp/