掲載日 2024年03月21日

NTTコミュニケーションズ
株式会社

【事例区分】
  • IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供

【関連する技術、仕組み、概念】

  • IoT
  • AI
  • 4G

【利活用分野】

  • 製造(科学)
  • エネルギー・鉱業

【利活用の主な目的・効果】

  • 事業継続性向上
  • その他(従業員の安全安心)

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 工場やプラントなどの防爆エリア※1では熱中症リスクがありながらも利用可能なデバイスに制限があるため有効な対策を行うことが出来ておりません。昨年、熱中症による緊急搬送の件数は805件(https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html)にのぼり、熱中症対策は各企業において非常に重要な課題となっています。有効な対策が求められる中で、防爆エリアに対応したデバイスが提供され始めていますが製品が限られ高額であるために全社導入のハードルが高く(エリアにより防爆デバイス・非防爆デバイスを使い分ける必要があるなど)防爆エリアを持つ企業全体に普及しておりません。

 また、現状では複数人の暑熱環境リスクを一元的に管理しリスクが高い状態をアラームにより知らせるソリューションが存在しておりません。

 そこで、NTTコミュニケーションズは防爆エリアに対応した従業員体調管理(暑熱環境リスク対策)ソリューションの提供により課題を解決します。

※1 防爆エリア…火災や爆発が起こり得る、空気中に可燃性物質が存在する場所のこと

IoT等利活用の経緯(課題解決の鍵となる技術・アイディアの発想やビジネスパートナーとの出会い等活用に至った経緯)

 2023年に防爆対応リストバンドセンサー(ドイツ製)が開発され、日本でも同年9月よりビーエヌテクノロジー社により販売が開始されました。NTTコミュニケーションズでは、現在提供中のIoTプラットフォームサービス(Things Cloud®)にこのドイツ製センサーを組み合わせることで、これまで以上に利用範囲を拡大します。また、異常状態の検知に加えて暑熱環境リスクの未来予測機能(安全安心ソリューション)を加えることで、より高精度で高品質な従業員体調管理(暑熱環境リスク対策)ソリューションを提供いたします。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

Things Cloud®(IoTプラットフォーム):
https://www.ntt.com/business/services/ai-iot/iot/things-cloud.html

安全安心ソリューション:
【概要】https://www.ntt.com/business/services/anzenanshin.html
【紹介動画(PoC事例のご紹介)】https://openhub.ntt.com/event/7402.html

防爆対応リストバンドセンサー:
https://www.bn-technology.co.jp/product/pdf/mobile/IS-SW1.1.pdf(PDF 3.59MB)

サービスやビジネスモデルの概要

 Things Cloud®はさまざまなセンサーを簡単に接続し、データ収集、可視化、分析、管理などができるIoTプラットフォームサービスです。データの収集のみならず、センサーの通信状況の監視や可視化UIの提供など、IoT活用に必要な機能をワンストップで提供いたします。1デバイスあたり月額110円(税込)から利用できる料金プランによりスモールスタートが可能となります。また、APIによるシステム間連携や万単位のデバイスを一元管理可能なサービス基盤によるスケーラビリティを備えており大規模なIoT導入/IoTビジネスの実現にも対応いたします。Things Cloud®の料金プランについては以下の図1を参照願います。

図1 Things Cloud®の料金プラン

 安全安心ソリューションは、バイタルデータを始めとするリアルタイム検知データと過去の事故関連データを相関分析し、事故の予兆検知・未然防止を可能にする機能を有しています。また、ダッシュボードではリスク傾向を把握し、結果に基づいた教育などの対策実行、作業計画への反映を可能にします。安全安心ソリューションの構成概要については以下の図2を参照願います。

図2 安全安心ソリューション構成概要

 防爆対応リストバンドセンサーには、国内防爆検定に合格し、国際標準防爆規格IECEx及び欧州防爆規格ATEXを取得済みの本質安全防爆構造を有するZone1/21対応の製品(IS-SW1.1)を採用しています。詳細については製品紹介サイト(項番2.1に記載)を参照願います。

ビジネスやサービスの内容詳細

 防爆対応リストバンドセンサーより従業員のバイタル情報を収集しThings Cloud®上へデータを蓄積します。また、環境センサーを施設内(防爆エリア外)に配置することでWBGT値※2をバイタルデータと同様にThings Cloud®上へ蓄積します。

 Things Cloud®上に蓄積されたデータは別プラットフォーム上の安全安心ソリューション基盤にも連携され、気象情報や作業計画と組合せた未来の暑熱環境リスクを見える化します。(図3参照)図表では、体温や環境センサー、着衣情報をもとに算出した熱中症リスクレベルをy軸、該当時刻をx軸で表示しております。ヒートドットマップではエリアごとのWBGT値や暑熱環境リスクが一目でわかるようになります。(図4参照)

 蓄積したバイタル情報とWBGT値により、予め設定された各個人の閾値を超過した場合に暑熱環境リスクが顕在化したと判断しアラート通知を行います。アラート通知の方法としては通常のメールでの発報に加えて、表示灯の点灯や電話による通知もオプションにて提供可能となります。

※2 WBGT値(暑さ指数)…気温、湿度、日射・輻射の3つの要素を測定して熱中症の原因となる環境を数値化したもの

図3 安全安心ソリューションダッシュボード画面サンプル
(x:該当時刻、y:熱中症リスクレベルの数値)

図4 ヒートドットマップ画面サンプル(WBGT値)

図5 従業員体調管理ソリューション概要

 

 

取り扱うデータの概要とその活用法

・ユーザーのプロファイル情報(年齢など)(手入力/ファイルアップロード)
・作業計画(手入力/ファイルアップロード)
・設備データ(手入力/ファイルアップロード)
・過去の労災関連データ(手入力/ファイルアップロード)
・GPS(JSON)
・バイタルデータ(心拍数)(JSON)
・WBGT値 (JSON)
・近隣の気象情報(CSV)

 

事例の特徴・工夫点

IoT等による価値創造

 従来の暑熱環境リスク対策に加えて利用エリア(防爆エリア)の拡大と危険の未来予測を行うことで、より高精度・高品質な従業員体調管理(暑熱環境リスク対策)ソリューションの提供が可能となります。

 未来予測についてはNTTコミュニケーションズ独自の技術のため、現在特許申請中となります。また、得られたバイタルデータを元に作業負荷を計測して平準化、作業計画の改善などを実施することで生産性向上にも貢献できると考えています。

  セキュリティ面においてもThings Cloud®はNTTコミュニケーションズの管理・運営する日本国内のデータセンターを利用したクラウドサービス上に構築されており、強固な物理的セキュリティが適用されています。またデータが改竄されないよう、デバイスからアプリケーションまでエンド・ツー・エンドの通信にHTTPSを利用しています。

IoT導入や事業化時に苦労した点、解決したハードル、解決に要した期間

 IoT導入には利用シーンごとに導入の難しさがあり、防爆エリアにおいては機器を持ち込む事も困難な状況でしたが、防爆デバイスの登場により防爆エリアでの機器導入の課題を解決することができました。暑熱環境リスク予測については、実ユーザーのPoCを重ねる中でユーザビリティを考慮して事故発生を防ぐことに効果的かつ視認性の高いダッシュボードの開発を進めています。またアルゴリズムの開発にあたっては、複数データの学習を重ね、学習結果を元に検証を繰り返すことで検出精度を高めることに成功しました。

 リストバンドセンサーの防爆検定においても検査基準を満たすため、ハードウェアの改修(例えば、特殊な材料の使用、密閉性の向上)やソフトウェアの調整が必要となりました。特に、静電気防止措置の強化は、防爆検定において重要な側面でした。合わせて、極端な温度や圧力、衝撃に耐えることが求められます。このような条件下での安全性を確保するために、何度ものテストと改修を行い、これらの安全基準を満たしていることを示すための詳細な技術文書とテスト結果を提出することで国内対応の規格を取得いたしました。

重要成功要因

 Things Cloud®は、多様なデバイス接続や外部システム連携に対応しており、主要機能と組み合わせることで高い拡張性を実現するIoTプラットフォームです。本ソリューションにおいてもThings Cloud®を活用して多様なデバイス接続を可能にしています。

 複数のユーザーさまへのヒアリングやワークショップを通じて、安全安心を取り巻く現状やニーズ情報を収集し、製造業のお客さまに共通的な課題を抽出しました。また、特定のお客さまとのPoCを通じて実際の現場で求められる要件を的確にとらえて開発を進めることができました。現在も、お客さまと膝を詰めてディスカッションをする中で真に必要な機能要件を踏まえた開発を進めています。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 安全安心ソリューションで特許を出願している予測アルゴリズムは自社内の経験豊富なデータサイエンティストがPoCを通じて内製開発しました。
また、本ソリューションで利用する防爆リストバンドセンサーは日本初「本質安全防爆Zone1※3」の防爆対応品であり、危険を伴う防爆エリアでの利用において高い安全性と利便性を提供しています。

※3 Zone1・・・通常の状態で爆発性雰囲気が存在、生成される可能性があるエリア(通常の作業時において、可燃性ガスや蒸気を放出するタンク/容器の開口部付近など

 

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 個々の作業者の方の心身の状況が生産性に及ぼす影響やそれに関するデータを収集し、作業者の方一人ひとりの負荷を削減しながら生産性を高めていけるようなソリューションの実装を目指しています。そのために、トライアルにご参加頂ける企業さまを集めて検証を進めています。

技術革新や環境整備への期待

 防爆エリアで利用できるリストバンドセンサーや通信機器がより安価かつ多機能化することで、防爆エリアでの暑熱環境リスクへの対策が広く実施されることに期待しています。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 未来予測機能の発展においては生産性向上のテーマに関してトライアルに参加頂ける企業さま、先進技術を持った共創パートナーさまを募集しています。

 従業員体調管理(暑熱環境リスク対策)ソリューションとしてはさまざまなメーカーさまと連携することで、ウェアラブルデバイスの多様化を推進し、他に作業制限や制約がある現場においての生産性向上を図りたいと考えております。

 

本記事へのお問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ株式会社 ソリューションサービス部 南、萩野、土田 /5G&IoT部 乙瀬、坂井

e-mail : pcm-iot-sol@ml.ntt.com

URL :   https://www.ntt.com/index.html