掲載日 2023年03月17日

コニカミノルタ株式会社

【事例区分】
  • IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
  • IoT等を活用した社会課題解決の取り組み
  • IoT等を活用した実証実験等の取り組み
  • IoT等の自社内業務等での利活用

【関連する技術、仕組み、概念】

  • IoT
  • AI
  • DX
  • 5G

【IoT等の利活用分野】

  • 製造(食品、化学、機械、医療)
  • 流通・小売
  • エンターテイメント
  • 防犯セキュリティ
  • 運輸・交通
  • ヘルスケア・医療・介護
  • その他(画像処理を利用する可能性のあらゆる業種が対象)

【IoT等の利活用分野】

  • 生産性向上、業務改善
  • サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上
  • 事業継続性向上
  • 事業の全体最適化
  • 新規事業開拓・経営判断の迅速化・精緻化

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 コニカミノルタ(以下、当社)は、2030年にあるべき「持続可能な社会」の姿を見据えて、社会・環境課題が当社に与える影響を機会とリスクの観点から評価し、そこからのバックキャスティングによって「今なすべきこと」を「マテリアリティ(重要課題)」として特定した。マテリアリティは「働きがい向上及び企業活性化」「健康で高い生活の質の実現」「社会における安全・安心確保」「気候変動への対応」「有限な資源の有効利用」の5つで、これらにおいて将来的な社会課題の解決への貢献を目指している。(図1)

図1 価値創造プロセス(出所:コニカミノルタ提供資料)

 

IoT等利活用の経緯
(課題解決の鍵となる技術・アイディアの発想やビジネスパートナーとの出会い等活用に至った経緯)

 当社は創業以来150年にわたってカメラ、写真事業で培ってきた画像の入出力、画像処理を中核とする「イメージング」技術を活用して、世界中のお客様の“みたい”という想いに応え、人々の生きがいを実現してきている。これこそ当社の原点であり、これからも引き継いでいくべきDNAだと考えている。(図2)

図2 コニカミノルタのDNA(出所:コニカミノルタ提供資料)

 一方、上述の社会課題を解決するソリューションを創出していく際、社会のニーズ・利用シーンが多様化し、一企業だけで顧客の課題を解決することが難しくなってきた。そこで、強みとする「イメージング」技術と最新のAI・IoT技術を掛け合わせて画像IoTのプラットフォーム『FORXAI(フォーサイ)』を開発した。

 FORXAIはIoTの共通基盤となるIoT Platform、パートナー及び当社が開発したAI技術群であるImaging AI、データの入出力及びデータ処理を行うデバイス群であるEdge Deviceから構成されている。当社はFORXAIパートナープログラムに加盟した企業とコミュニティを構築し、各企業が保有しているAI技術やデバイスなどのアセットを持ち寄り、すばやく高品質なソリューションを創出することで冒頭に述べた5つのマテリアリティの解決に貢献する。(図3)

図3 FORXAIの構成(出所:コニカミノルタ提供資料)

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

・サービス名:FORXAI Imaging AI

・関連URL: https://forxai.konicaminolta.com/service/technology/01

・導入先:アンリツ株式会社、GROOVE X株式会社、ダイトロン株式会社、日本電気株式会社、丸紅ネットワークソリューションズ株式会社など食品、製造、リテール、アミューズメント等多岐に渡る企業
 パートナー一覧ページ:https://forxai.konicaminolta.com/service/partners

サービスやビジネスモデルの概要

 FORXAI Imaging AIは画像を中心とした高速・高精度なAI処理の技術群である。
画像・動画のAI処理は、クラウドの豊富なリソースで実施するやり方もあるが、当社は情報機器や医療機器の画像処理を高速に行ってきた経験と、メーカーの強みを生かして、エッジ側 (組み込み機器やオンプレミスのサーバなど)に、低消費電力で高速なAI機能を実装している。
 すなわち、End to EndでAIシステムを最適化できる技術を持っていることが当社の強みであり、これが当社の画像 IoT戦略の基本となっている。(図4)

図4 コニカミノルタの画像IoT・AI技術の強み(出所:コニカミノルタ提供資料)

 Imaging AIを活用することで、パートナーは、AIアルゴリズムをエッジでもクラウドでも動かすことができ、最適化されたシステムを構成できる。また、当社のAIアルゴリズムだけでなく、技術パートナーのAIアルゴリズムも豊富にラインナップしており、それらを簡単に載せ替えることができる。

【参考:利用可能なアルゴリズム一覧】https://forxai.konicaminolta.com/service/environment/02

 尚、当社では、特に 「人行動」「先端医療」「検査」の3つのカテゴリーに絞って必要なAI技術の開発を行っている。これらは、エッジ処理の必要性が高く、応用範囲が広いという特徴を持つ。また、画像・動画を扱うので、大量のデータを学習する必要がある。当社ではこの3つのカテゴリーに特化して、最適化のための独自の学習環境を整備している。

ビジネスやサービスの内容詳細

 FORXAIパートナープログラムに加盟すると、パートナー企業専用サイトを通じて技術開発やソリューションの企画に役立つ下記のコンテンツを利用できる。

・FORXAIの技術情報​

・パートナーの事例や取組情報​

・イベント等の情報

 パートナー企業が、AIアルゴリズムを提供する、あるいはソリューション開発を行うために、FORXAI AI認定プログラムを用意している。AI認定プログラムは、パートナー企業のAIモデルをFORXAI Imaging AIとしてラインナップするためのプログラムであり、認定されたAIモデルは、当社を通じてソリューション開発者へ提供され、AIソリューションに仕立てることで、お客様へ提供される。
 また、ソリューションを開発するパートナーは、様々なAIモデルから必要かつ最適なものを選択することで開発にかかる時間やコストを節約することができる。(図5)

図5 AI認定プログラム(出所:コニカミノルタ提供資料)

 上記以外にも、FORXAIのAI機能を気軽に体感できる開発キット「FORXAI Experience Kit」、初期の開発工数を抑えつつユースケースを想定したPoC開発を早期に開始できる汎用キット「Quick Start Kit」をラインナップしており、迅速なソリューション開発を支援している。
これらを利用した事例としては以下の例がある。

①   人流マーケティング(丸紅ネットワークソリューションズ株式会社)
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2021/0615-01-01.html

②   食品工場のDX(アンリツ株式会社)
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/newsroom/2022/1031-01-01.html

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 モニタリングカメラや検査カメラからの画像・映像データ
  ―マーケティング活用(属性情報、人数カウント、滞留情報、位置特定など)
  ―工業部品の外観検査(正常異常、分類など)

 

事例の特徴・工夫点

IoT等による価値創造

 お客様の課題を解決する際に、一社でできることは限定的であり、多くの時間を要するなどの問題が発生することがあった。FORXAIコミュニティでは、ソリューションパートナーが、コニカミノルタと技術パートナーが提供する多彩なAIアルゴリズムを使いソリューションを開発している。この2年間で57社がパートナーとなっており、画像を扱うということにフォーカスしたことが受け入れられたと考えている。 

IoT導入や事業化時に苦労した点、解決したハードル、解決に要した期間

 いままで社内で培ってきた画像認識の技術は、案件ごとに特化した仕様で作り込むことで性能を確保していたが、特化仕様では適用ユースケースが狭くなってしまう。幅広いお客様に使って頂くために、さまざまなカメラやデバイスに対応したImaging AIの開発を行い、技術の汎用化を実現した。
 また、精度や認識率を上げるために、学習用のデータをどう集めるか、問題が発生した時にどのようにAIのアルゴリズムを修正していくかも課題だった。FORXAIではMLOps(Machine Learning Operations)の仕組みを使って、お客様の現場データに合わせて、AIを常に最新なものに更新することを実現している。

 さらに、AIの誤った利活用はプライバシー侵害や人権侵害などを始め、様々な問題を生じる可能性がある。そのため当社では「コニカミノルタグループ AIの利活用に関する基本方針」を策定し、適正なAI利活用を推進している。

https://forxai.konicaminolta.com/news/26
https://www.konicaminolta.jp/about/csr/use-of-ai.html

重要成功要因

 コンピュータビジョンの最難関国際学会であるECCV 2018 や国内最大規模の画像認識シンポジウムMIRU2022等で発表するなど、当社が開発したアルゴリズムは、世界トップレベルの認識精度と高速処理を両立する技術であると考えている。また、何よりもパートナー企業との技術連携やソリューション開発によって、プラットフォームを発展させている。当社の強みは次のとおりと考えている。

  • 三位一体(IoT Platform、Imaging AI、Edge Device)でのソリューション提供
  • エッジデバイスとアクセラレータを組み合わせた高速化
  • 半天球カメラや複数地点のカメラ色調補正など画像・デバイス技術で培ったAI処理精度のロバスト性 ​​​​

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 当社は、元々複合機で画像を綺麗に見せる画像処理技術を持っており、世間の潮流となった機械学習を取り込み、“画像IoT”を開発した。社会課題の解決を実行するためのソリューションとして、パートナー共創並びに社内実践を通じて開発を行ってきた。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦

 今後、さらにAI・IoTシステムに対するニーズや利用シーンが多様化し、必要な処理・機能のアップデートの頻度が高まるなどメンテナンス性が重要になる。このため、AI開発とリリース後の運用を一体化した検討を強化することが必要と考える。
 また、それらの技術を開発するIT技術者の不足が、大きな課題となっている。当社では5年前からIT技術者の社内教育に力を入れており、AI技術者、データサイエンティスト、IoT関連のシステムアーキテクトなどの教育・育成に力を入れている。

「増殖中!コニカミノルタの変革を加速するDX技術人財」: https://forxai.konicaminolta.com/blog/033

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 FORXAI のパートナー共創を軸に、「人と機械(テクノロジー)が意識せず共存共栄する安心・安全社会」を実現したい。 「機械(テクノロジー)」に焦点を当てて考えると、働き世代の減少とグローバルでの競争力の維持・向上という課題解決には、テクノロジーの活用が必要である。一方、「人」に焦点を当てて考えると、 すべてがロボットに置き換わるのではなく人が主体的に関与すべきである。「機械 (テクノロジー)」 で作業の高度化を図りつつ、「人」はよりクリエイティブな業務に集中する、そのような社会を実現したいと考えている。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 これまでIoT・AI技術を当社の既存事業(オフィス・産業印刷、ヘルスケア、センシングなど)に活用してきた。ここは注力分野なので、引き続き取り組みを拡大していきたい。一方、当社にとって新規の事業領域(食品業界・小売業界・建設業界等)への展開については、パートナー連携によって強化したいと考えている。

 

本記事へのお問い合わせ先

FORXAI事業統括部

e-mail : forxai-inquiry@konicaminolta.com

URL :  https://forxai.konicaminolta.com?utm_source=smartiot​​​​​​​

 

関連記事

【ここに注目!IOT先進企業訪問記】第71回 顧客のさまざまな「みたい」を実現するコニカミノルタの画像IOTプラットフォームFORXAI