掲載日 2019年11月06日

シタテル株式会社

【提供目的】
  • 事業・業務の見える化
  • 最適経路・プロセスの選択

  • 変動する需給バランスの最適化

  • その他

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 一般顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 当社は、ひと・しくみ・テクノロジーの力によって産業が抱える課題を解決し、豊かな社会を実現することをビジョンとしたベンチャー企業である。

 当社がプラットフォームを提供するアパレル業界は、衣服の企画デザインから、製造、卸売、小売までのサプライチェーンが複雑に構築されている。その中で、衣服の企画デザイン・卸売を担う企業を、一般にアパレル企業と呼ぶ。

 製造から小売までのサプライチェーンを自社で保有し、大量生産を得意とするSPA(製造小売り)の台頭によって、従来のアパレル企業にはより個性的な商品展開が求められていた。そこでアパレル企業は、定番商品に加えて新たなデザインのチャレンジ商品をシーズンごとに数多く展開し、流行の発信やブランドの訴求を行っている。このチャレンジ商品は生産量が少ないため、多品種少量生産が必要となる。

 製造を行う縫製工場は、得意とする衣服の種類や素材ごとに特化しており、国内に約15,000社存在する。アパレル企業は、日常的に取引がある限られた工場に製造を委託することが多いため、その工場にチャレンジ商品をつくるだけの余力がない場合は新たな工場を見つける必要がある。しかし、そのためのネットワークは限られており、つくりたいときに最適な工場を見つけることは困難であった。

 また、多品種少量生産を実現するためには、衣服づくりのプロセスの効率化も必要である。衣服づくりには、デザインやパターン(裁断・縫製に使用する型)の作成、生地やボタンなどの調達および工場への持ち込み、サンプルの生産、量産といったプロセスがある。これらのプロセスは一直線に流れるわけではなく、デザインや縫製指示書などの細かな更新を繰り返しながら最終製品に至ることが多いため、製造に関わるアパレル企業・縫製工場は緊密に連携して、最新の情報を共有する必要がある。一方で、これらの情報連携はFAXやメールのやり取りで行われることが多く、人手に依存した手間のかかるコミュニケーションは多品種少量生産への対応を難しくしていた。

 そこで当社は、テクノロジーの力によってアパレル企業と縫製工場を結び付け、さらに衣服づくりのプロセスを効率的にする新たなしくみを構築するため、衣服生産のオンラインサービス「sitateru」を開発した。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名 :sitateru(シタテル)

URL :https://sitateru.com/

サービスやビジネスモデルの概要

 sitateruは、衣服をつくりたい企業・人と工場をマッチングすることに加えて、衣服づくりの全プロセスをサポートするプラットフォームである。

sitateruは、新たな商品を展開したいアパレル企業や、アパレル業界に新規参入したいがまだ量産手段を持っていないクリエーターなどに対して、つくりたい衣服の種類や量にあわせて最適な工場をマッチングする。加えて、サプライチェーンを跨いだ情報を一元管理することによって、コミュニケーションの見える化や効率化を実現している。こうして、従来はできなかった最小ロット50枚からの少量生産が可能となった。

 本サービスは、ホテルや飲食店などでオリジナルユニフォームをつくりたい企業も利用可能である。ユーザーが衣服づくりの専門知識を持っていない場合は、当社のスタッフ(コンシェルジュと呼んでいる)がつくりたい衣服のイメージをヒアリングし、当社が持つデザイナーとのネットワークを駆使して複数のデザインを提案することができる。

 また、より精度の高いマッチングを実現するため、プラットフォームには工場ごとの縫製レベル、対応可能アイテム(例:コート・ジャケットなどの重衣料、シャツなどの軽衣料など)、料金、稼働情報などのデータが集積されている。この集積データが、衣料アイテムや縫製技術の難易度に合致する縫製工場を的確に選ぶ鍵となっている。

 このように、sitateruのプラットフォームを使うことによって、プロ・アマを問わず、ユーザーは「衣服をつくる」という創造的な作業に注力することができる。

内容詳細

 sitateruでは、以下に示す一連のプロセスをWeb画面やチャットを介して行うことによって、情報の一元化を行っている。関係者が、仕様検討から納品までのコミュニケーションの履歴や最新のデザイン情報などをリアルタイムに共有できるのである。

(1)  つくりたいアイテムのイメージをつかむ

  • インターネット、雑誌などで、つくりたい衣服のイメージに近いものを探してみる。
  • シタテルの生産事例、ラインナップをチェックする。

(2)  アカウント登録

  • シタテルのアカウント登録を行い、マイページから相談を開始。
  • 画面の指示に従って、初回メッセージを送る。専任コンシェルジュより返答がある。

(3)  仕様検討

  • コンシェルジュと相談しながら、生産計画とデザインをまとめる。デザイン、納期、数量などを詰めると、概算見積もりが提示される。
  • sitateruのデータベースには縫製レベル、対応可能アイテム、料金、稼働状況といった多くの情報があり、クライアントの要望に応じて最適な工場がマッチングされる。

(4)  サンプル作成

  • 量産に入る前に、仕様を確認するためのサンプルが作成される。(通常2週間程度)
  • 仕上がりの状態を確認し、量産のために必要な仕様を決定する。

(5)  量産・納品

  • 希望の数量分がすべて生産され、指定の場所に納品される。
  • ここまでに発生した、素材の調達、工場での生産、輸送などの各種支払は当社を経由して行われる。その費用に一定の手数料を加えた金額が、当社より請求される。

概要図

 sitateruを利用して製造した衣服の事例を図-1に示す。

図-1 sitateruを使用して製造した衣服の事例

 

 サービスの提供開始から多くのクライアントにsitateruをご利用いただいている。本稿執筆時点での、登録クライアント数、提携サプライヤー数を図-2に示す。

図-2 クライアント数と提携サプライヤー数

 

 従来の大量生産では、縫製工場の繁閑の差が大きかった。中小の縫製工場では、需要のサイクルは分かっていても繁忙期にあわせた設備投資はできず、収益上の課題であった。

 sitateruのサービスによって、閑散期に多品種少量品のロットを数多く生産し、工場の稼働率を上げることができる。その一例を図-3に示す。

図-3 sitateruのサービスによる稼働向上の例

取り扱うデータの概要とその活用法

 sitateruのプラットフォームでは、マッチングに必要な工場のデータに加えて、衣服製造のプロセスに関わる、あらゆるデータを管理している。一例を以下に示す。

デザインや製造プロセスに関するデータ

  • 数量、納期
  • デザイン、パターンデータ、縫製指示書
  • 素材の調達先や数量
  • アイテムごとの、問い合わせや連絡の履歴

工場に関するデータ

  • 縫製レベル、対応可能アイテム
  • 料金
  • 従業員数、経験や作業品質
  • 稼働状況

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 当社のサービスは一種のBPR(Business Process Reengineering)で、これまで慣れ親しんだやり方をデジタルの活用によって変えることである。自社のプロセスだけでなく、業界のプロセス変革につながる挑戦であるため、アパレル業界のお客様に理解していただきビジネスを拡大するための苦労がある。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 sitateruの開発は、新たなしくみづくりへのチャレンジであるため、アジャイル開発でリリースを重ね、改善版を工場に問い続けながら、サービスをブラッシュアップしていった。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 sitateruというコミュニケーションのシステムによって、衣服づくりの入口から出口までをシステム化することができた。従来のサプライチェーンは、アパレル企業と工場などの点と点のつながりが十分でなかったところを、線でつなぐことができるようになった。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 線ができたことによって、それぞれの点の中で発生するデータ収集を効率化する段階になってきた。そのため、これまで試行してきたIoTを活用した工場の稼働データ収集などの効率化を進めたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 工場のデータを収集し活用するために、裁断機やミシンなどの機械メーカーとの連携を進めたい。また、CAD・CAM(Computer Aided Design / Manufacturing)を使った自動生産システムとの連携を行いたい。

 

本記事へのお問い合わせ先

シタテル株式会社 広報 原 正樹

e-mail : Masaki.hara@sitateru.com

URL :   https://sitateru.co.jp/