掲載日 2021年10月13日

セコム株式会社

【提供目的】
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 故障や異常への迅速な措置
  • その他(人とテクノロジーの最適な役割分担)

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 セコム株式会社(以下セコム)は、2030年に向けた長期ビジョンとして、暮らしや社会に安心を提供する社会インフラとして「あんしんプラットフォーム」戦略を推進している。この推進には、セコムと想いを共にする(セコムではこれを「共想」と呼んでいる)産官学のパートナーが参加している。その一環として、KDDI株式会社(以下KDDI)との共想による5Gを活用した次世代スタジアム警備の実証実験を行った。

 近年、大規模スポーツイベントや展示会・博覧会などの広いエリアのカバーを要する警備の需要が増えている。東京オリンピック・パラリンピックの後も、2022年のワールドマスターズゲーム、2025年の関西万博をはじめとした大規模イベントが目白押しである。

 大規模イベントの警備では、監視センターに情報を集約して分析し、異常を発見したら直ちに警備員を現場に急行させる必要がある。そのためには、カメラなどで会場全体を監視しながら多くの警備員を要所に配置するという面的な警備が求められるが、少子高齢化による働き手不足のために人的リソースは限られている。

 会場内の異常をいち早く発見するためには会場内に配置したカメラが重要であるが、固定カメラは死角が発生しやすい。固定カメラの死角をカバーするために仮設カメラを使用すると、イベントごとに大量の機器設置と撤去作業が発生してしまう。また、イベント警備では、同じ会場を使う場合でもイベント内容によって警備のポイントが変わるためカメラや人員配置の柔軟性も求められる。ドローンや警備員が持つ移動式のカメラを利用することでこの課題の解決が期待できるが、4Gモバイル回線ではトラフィック状況を考慮した画質の調整などが必要となり、十分な画質を得ることができなかった。

 こうした中、セコムとKDDIは、5GとAIを活用し、ドローン・ロボット・警備員が装備したカメラによるスタジアム周辺の警備の実証実験を東大阪市花園ラグビー場で行い、5Gを活用した次世代スタジアム警備の有効性を実証した。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL

サービス名:5Gを活用したスタジアム警備
関連URL (プレスリリース): https://www.secom.co.jp/corporate/release/2019/nr_20190819.html
関連動画(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=NR7fugJXrko&t=3s

 本取り組みは、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)主催の、モバイルコンピューティングの導入により高度なシステムを構築し、顕著な成果を上げている企業や団体を表彰する「MCPC award 2020」グランプリ/総務大臣賞を受賞した。
 

サービスやビジネスモデルの概要

 本実証実験では、会場に移動式モニタリング拠点「オンサイトセンター」を設置し、オンサイトセンターにリアルタイムの映像情報を集約した。加えて、ドローンや警備ロボットに搭載したカメラ、警備員が装備したウェアラブルカメラの4K映像を5Gで伝送することで、以下の警備シナリオを実証した(図-1を参照)。

  1. 会場上空を飛行するドローンの俯瞰映像をオンサイトセンターに送信し、オンサイトセンターで行動認識AIを使用して「もみあい、ひったくり」などの異常行動を検出

  2. 異常行動を検出した際は、オンサイトセンターの指示により警備員が被害者の元へ急行し、警備員のウェアラブルカメラで現場の詳細状況を確認して対処を実施

  3. ドローンで犯人の逃走方向を、ロボットで詳細な逃走経路を確認

 このように、AIと移動式のカメラを活用することによって、以下に示す次世代警備の価値が提供できることを実証した。

  • スタジアム内外の広域を機動的に監視
  • 人が集まる場所でもきめ細かで質が高い警備
  • イベント内容に応じた警備エリアの設定などの柔軟な計画
     

図-1 スタジアム警備の全体構成
(出所:セコム提供資料)

内容詳細

 実証実験で使用した技術について以下に記載する。

(1) オンサイトセンター

 車両に必要な機材を積み込むことによって、イベント会場などの警備が必要な場所に必要な時に移動することができる。オンサイトセンターでは、映像のモニタリングに加えて、収集した映像をAIでリアルタイムに分析して、オペレーターが警備員に対して的確な指示を出すことができる(図-2を参照)。
 

図-2 オンサイトセンターの活用
(出所:セコム提供資料)

(2) 警備ロボットの活用

 セコムは本取り組みの前からロボットを使用した警備を実用化しており、空港やビルのロビーなどで稼働する警備ロボットを目にすることが多くなっている。今回の実証では、レーザーセンサーにより自己位置を特定しながら会場内の巡回ルートを自律走行できる「セコムロボットX2」を使用した。

図-3 セコムロボットX2の外観と機能
(出所:セコムWebページより転載)

(3) AIを使用した異常行動の検知

 ドローンを使用することによって会場全体を上空から俯瞰でき、もみ合いや転倒の発生などの異常行動を早期に発見することができる。しかしながら、ドローンからの映像に写っている人の大きさは豆粒のように小さく、そこから人間の目で異常行動を見つけるのは不可能である。そのため、KDDI・KDDI総合研究所が開発した、AIによる異常行動の検知技術を活用した。AIを活用することによって、撮影地点(ドローン)から約50m離れた場所にいる人間の骨格の動きを認識し、「もみ合っている」「倒れている」などの異常行動を検知できることを実証した(図-4を参照)。

 AIが人間の肉眼では識別できないような小さな画像から異常行動を検出するためには、4Kカメラの解像度が必要であった。この点でも4K30fps (frame per second) の高解像度映像を伝送できる5G通信の有用性が確認できた。
 

図-4 AIを使用し異常行動の検知
(出所:KDDI・KDDI総合研究所提供資料)

(4) テクノロジーを活用した次世代イベント警備

 今回の実証実験で、ドローンに搭載したカメラの上空からの俯瞰的な映像を使用することによって、固定カメラを使用した監視で発生しうる死角をなくすことに加えて、警備員の巡回を代替えできることが確認できた。映像の監視についても、AIを使用することによって監視員の負担を減らしながら、オンサイトセンターでの正確かつ迅速な対応指示が可能であることを確認できた。

 このように、テクノロジーを活用することによって、ドローンやロボットは得意とする監視の部分を担い、人間は高度な判断やコミュニケーションが求められる場面に注力するという最適な役割分担が可能となることを実証できた。

 

概要図

 今回の実証実験は、人手不足やインバウンドの増加などの様々な社会課題がある中で、「安全・安心なイベント開催のために提供していきたい警備サービスとは何か?」という問いを起点に、次世代警備のあるべき姿として導き出した(図-5を参照)。

 こうした取り組みをさらに進めて、当社が目指す「あんしんプラットフォーム」の実現につなげていきたいと考えている(図-6を参照)。

 

図-5 スタジアム警備で提供していきたい価値と現状の課題
(出所:セコム提供資料)
 

図-6 セコムの安心プラットフォーム戦略
(出所:セコム提供資料)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

  • ドローン、ロボット、警備員の4Kカメラ映像

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 実証実験で使用した5Gの無線周波数帯はミリ波(28GHz)であった。ミリ波は直進性が高く遮蔽物に弱いため、場所によっては5G本来の高速通信ができない場合があり、5Gを使いこなすための通信エリアの作り方に難しさがあった。

 デバイスを屋外の炎天下で使用すると発熱対策が必要になる場面があった。引き続きデバイスベンダーと共にデバイスの低消費電力化などに取り組みたい。
 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 今回の実証実験では、新たな技術開発は行っておらず、5Gを活用して既にある技術を繋ぐことで新たな価値創造を目指した。この点については目論見通り既存技術の新結合によるイノベーションが実証できた。
 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 セコムでは、警備の現場に新しい技術を導入する際には、机上の検討に加えて、現場がその技術を使いこなして安全・安心の向上に寄与できることが確認できるまで、実証実験などによるフィードバックを繰り返し行うようにしている。本実証実験は2019年8月に実施しており、その後も5Gを使った実証実験などを繰り返して実用化につなげたいと考えていたが、コロナ禍によって大規模イベントの開催が制限される中で計画が思うように進められない状況である。
 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 キャリアによるパブリック5Gのエリア展開とイベント開催場所のギャップが当面の間出ることが予想されるため、ローカル5Gを使ってプライベートな5Gエリアを警備対象の周辺に作ることも検討したい。

 あんしんプラットフォームの構想の中では、ローカル5Gを柔軟に展開するプレヤーを含めて、プラットフォーム化が重要になると考えている。そのため、様々なレイヤーの企業との共想を進めていきたい。
 

将来的に展開を検討したい分野、業種

 警備員が装備するウェアラブルカメラ、ロボットやドローンといった個々の技術は、5G活用の検討を始めた2017年の時点で既に存在していた。そのためセコムは、5Gをいち早く使いこなして、こうした個々の技術をつなぐことができる存在になりたいと考えた。

 先ずはこのように既存の技術を5Gで高度化し、その先は、AIを活用して等身大のバーチャルキャラクターが警備・受付業務を提供する「バーチャル警備システム」のように、5Gの環境で初めて可能になるサービスに広げていきたい。

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本記事へのお問い合わせ先

セコム株式会社 寺本 浩之

e-mail :  h-teramoto@secom.co.jp