株式会社KMC
- 事業・業務の見える化
- コスト削減
- 故障や異常の予兆の検知、予防
- 故障や異常への迅速な措置
- 経営判断の迅速化・精密化
【活用対象】
- 自社で活用
- サプライヤー含めたグループ内で活用
- 企業顧客
IoT導入のきっかけ、背景
現在、世界のものづくりは、電子情報の活用が競争力の決め手となる時代を迎えている。そのキーワードになるのは「データ」。しかしながら、製造業の現場はさまざまな生産機械が存在しており、これらをネットワーク化し新しい仕組みを構築するまでにどうしても時間がかかる。この促進に必要なのは、日本のものづくりを熟知した専門家による的確な技術コンサルティングと現場にぴったりと寄り添った形で製造業のイノベーションを支援する「日本版IoT/M2Mシステム」の開発・提供ではないかと考えた。
このシステムでは、電子情報の活用を前提としていない古い生産機械への対応や現場作業時の操作の容易性など現場ニーズを踏まえた機能を実現した。これによって、中小企業様から大企業様までの幅広い製造業のイノベーションを支援している。
ここで事例を紹介する大手電機メーカのコニカミノルタ様は、企業変革の一環として人とモノの動きを把握することにより、付加価値提供や非連続な生産性向上を実践しておられる。この一環として、当社(KMC)のシステムを導入されたもの。
IoT事例の概要
サービスやビジネスモデルの概要
当社のIoT/M2Mビジネスは、技術コンサルティングの実施、「日本版IoT/M2Mシステム」を構成する電子カルテ、∑軍師などの開発・提供がメインである。また、導入企業はさまざまな規模の製造業となっている。ここで紹介するのは、コニカミノルタ様のIoT/M2Mを活用したパートナー企業を含めた統合SCM(サプライチェーンマネジメント)システム構築の事例である。
内容詳細
KMCの「日本版IoT/M2Mシステム」は、大きく3つの分野に分けられる。工場内の生産機械をネットワーク接続し、稼働状況を見える化する「M2M製品群(Σ軍師、QR銘板など」、職人のナレッジ、各製造プロセスにおける生産状況などの膨大なデータをクラウド上で保管する「IoT製品群(電子カルテ(M-Karte)など)」、そしてクラウド上のデータを知識・管理指標化するとともにノウハウを可視化することで経営者や現場が最大限活用することを支援する「AIM※製品群(M-Documentなど)」である。
※ AIM: Artificial Intelligence Management
その3分野の中心に位置するのが、開発・製造経験豊富なKMCの精鋭チームが提供する「スマートエンジニアリング」である。技術コンサルティングから人材育成まで、お客様の現状を詳細に分析し、最適な打ち手を提案している。
多くのお客様(導入メーカ)が保有している生産設備は、IoTに対応していない古い設備である場合が多いため、これに対応する必要がある。このため、制御盤を確認してデータを取得するI/Oポイントを発見する必要がある。しかしながら、設備仕様書が既にない、制御機器を一部更新しているのに更新情報(図面、仕様書等)がないことがしばしばある。また、機器は提供するが、接続は行わないIoT/M2Mメーカも多い。実は、これがIoT/M2Mがなかなか普及しない要因の1つとなっている。
IoT/M2Mシステムは、ソフトウェアの導入だけでは実現せず、様々な知識・技術を融合できなければ導入できない。KMCは全ての知識・技術を保有しており、かつ、ワンストップでシステム導入から、設置工事まで行うことができる唯一のメーカであり、これがコニカミノルタ様に評価頂いた点の1つである。
コニカミノルタ様は、当社の電子カルテ、QR銘板、Σ軍師、M-Documentを本社工場と国内関連部品製造会社3工場に展開されている。また、これを2017度から海外含めた生産拠点に拡大されるとともに、国内外のパートナー企業との連携についても計画、実行されている。パートナー企業を含む統合SCMシステム構築のためにIoT/M2Mシステムを採用するのは、世界でも先進的である。
電子カルテ:金型や生産機械、作業者などをQRコードで管理、不具合事象を声・画像・動画でリアルタイムに把握することにより、生産現場のトレーサビリティ確保を可能にする。
QR銘板:アルミプレートに直接QRコードを切削にて刻印し、表面に特殊ガラスコートを施したもの。
Σ軍師:生産ロギングデータや振動、温度、過負荷などの後付けセンサーデータを収集する機器。
M-Document:電子カルテが取り込んだ情報や管理表・マニュアル類を閲覧するためのシステム。
概要図
関連URL:http://kmc-j.com/case_example/コニカミノルタ株式会社/
取り扱うデータの概要とその活用法
- 電子カルテ(M-Karte)では、4M情報(人:Man、機械:Machine、材料:Material、方法:Method)を扱っている。人の識別や金型、設備などの個体識別にはQRコードを採用している。また、情報収集においては、QRコードで金型、設備などを識別し、タブレットを用いて作業情報、写真・ムービー、テキストなどの形で製造情報や不具合状態情報を取得している。さらに、帳票類は全てデジタル化している。
- M2Mでは、プレス、成形、自動機の製造ログ情報を主体に、リアルタイム、かつ、1ショットごとの管理を実現している。合わせて、温調機や乾燥機、センサー等の付帯情報については、∑軍師i1台当たり8台の設備と周辺機器のデータを収集している。測定機は3次元測定機、ノギス、ハイト等のデジタル測定機からの測定データを一元管理し、測定表や品質管理等に活用できるようにシステム化している。
- 収集した4M情報、デジタル帳票や作業マニュアル、規定などをタブレットで閲覧するM-Documentシステムを提供している。M-Documentには、経営・工場・ライン毎のコクピット機能(画面・グラフ)を搭載しており、これを工場内で用いることで帳票レスの実現、間接工数の削減を実現している。
事業化への道のり
苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間
- 電子カルテ(M-Karte)については、金型、設備、測定のアプリケーションから在庫管理システムに至るまで、コニカミノルタ様が利用しておられるシステムとの仕様整合や基幹システム等既存システムとの連携確保に多くの時間を費やした。当社の標準版電子カルテを1年程ご使用いただき、既存システムのソフトウェアの改良と電子カルテの機能拡張を逐次計画を立てて推進した。
- ∑軍師iについては、メーカが異なる設備、古い設備、周辺機器への対応もあり、付設工事には高度な専門知識が必要であった。
- QR銘板については、1年ほどかけてほとんどの金型やユニットに取り付け、金型メンテナンスの管理が的確に実施できるようになった
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
生産性向上や不良の予知・予防のために、コニカミノルタ様の技術陣と打ち合わせしながら、プレス荷重センサーを取り付けるなどして自動機の傾向値管理などの分析管理が可能なシステムを開発した。通信方式はEthercatを採用した。1台の∑軍師iで8台程度の複数台から情報取得が可能であるが、断線等の故障時にも情報取得を可能とするため、情報収集ルートをループ化した。
また、IoT/M2Mシステムの構築においては、4M情報の一体管理を可能とするため、自動データ収集、QRコード識別、運用規定閲覧等スマートファクトリーの運用に必要となるシステムを同時に構築した。既存アプリケーションとの整合性を確保や既存システムとの連携を確保するために、多くの開発が必要であった。このため、コニカミノルタ様との合同プロジェクトという形で技術コンサルティングを交えながら推進した。
今後の展開
現在抱えている課題、将来的に想定する課題
コニカミノルタ様の目標である「人・場所・国・変動」に一存しないものづくり、生産のQCD(品質・コスト・納期)改善、フレキシビリテイ生産の実現のためには、パートナー企業との連携は不可欠であり、今後ワールドワイルドな取り組みが一層必要となる。システムベンダーであるKMCにおいても、海外におけるサポート体制の構築が課題となっている。このため、2017度にマレーシアに販売・サポート拠点となる現地法人を設立し対応を始めている。
強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
パートナー企業を含めた生産のQCD改善や生産変動への対応、需要に応じた生産移管など物理的な生産活動の変化の動きに対して、IoT/M2Mシステムは簡単な対応で追随することが求められるので、これに対応した開発が必要になる。また、設備更新では、今後ロボットの活用やセンサーの追加設置も予想され、「取得データ」の有機的な活用が本格的に求められるので、この要望への対応も必要となる。
しかしながら、IoT/M2Mシステムの活用はまだ始まったばかりであり、当面は確実なデータ収集とシステム運用に心掛け、取得データの活用法については、現場、管理者と共に検討を進めていく必要がある。
また、パートナー企業の工場を含む各工場でIoT/M2Mシステムを展開していく上では、古い機械への対応もあり、時間と費用がかかるのが現状である。この節減に向け、安価なM2M機器の開発や無線によるネットワーク構築の検討を行っている。
さらに、IoT向けのソフトウェアとしては、金型・設備・測定・在庫といった各種用途向けアプリケーションの充実と「取得データ」の活用に向けたAI機能の開発を進めている。見える化に対しては、M-Dashboardのコクピット機能やM-Documentのデータ閲覧機能の充実のための開発を進めている。
将来的に展開を検討したい分野、業種
IoT/M2Mシステムとしては、上位のERPやMES※とのシステム連携を視野に国内外の他企業とのシステム連携を模索している。M2Mについても、生産加工機や周辺機器、センサー等の開発スピードが速くなっており、関連メーカとの情報連携が益々必要になっている。