掲載日 2018年10月16日
かもめや ロゴ

株式会社 かもめや

【提供目的】
  • 無人輸送による省力化と安全性を両立
  • 島の暮らしの利便性を向上し持続可能な社会を実現

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 一般顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 瀬戸内海には、大小727もの島々が点在する。その内の145島が有人島であり、さらに49島は人口100人未満の小島である。これらの小島の多くには、商店・診療所は存在せず、日用品や医薬品を確保するための苦労は、想像を絶するものである。加えて、高齢化・過疎化が急速に進み、定期船などの既存物流インフラを維持できるかどうか危惧されている。こうした離島の姿は、将来の日本の縮図である。そのため当社では、2020年の実用化を目指し、離島向け次世代ハイブリッド無人物流プラットフォームの開発・実証を進めている。

 当社創業者の小野 正人は、離島めぐりなどの離島好きが高じて、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の運営に2010年から関わった。また、瀬戸内の男木島に実際に居住し、島での生活や島民との交流を通じて、冒頭の課題を痛感した。このような中、Amazonが2013年に小型無人航空機(ドローン)を使用した物流のアナウンスを行い、無人航空機を使用した離島物流への期待が高まった。

 しかしながら、複雑なシステムの開発や法規制対応が必要となるため、国内の物流事業者の中でこれに追随する動きはなかった。そのため、自身にて無人航空機を使った離島向け物流プラットフォームを開発することを決意し、2014年に起業した。

 開発にあたっては、離島での生活経験を活かし、以下のコンセプトを設定した。

  • 輸送物資の量や緊急度に応じて、無人航空機に加えて、無人輸送船も利用可能とする
  •  無人航空機は航空法により、人や物件(建物、車など)から30m以上離れた位置を飛行する必要がある。そのため、民家直近まで機体を誘導せず、島毎に定めた固定の離着陸地点に誘導する
  •  無人航空機の離着陸地点、無人輸送船の到着港から配送先の間には、狭い路地や急な階段が存在することが多い。高齢者の荷物ピックアップ負担を下げるために、無人輸送車を使用してラストワンマイルの輸送を行う
  •  陸海空の輸送手段のスケジューリング・連携、機体等の監視、航路の気象モニタリングを行う統合運行管理システムを開発する

 上記のように、目標に向けて非常に幅広い開発を行っているが、ベンチャー企業である当社一社にて全ての開発を行うことはできない。そのため、開発パートナーの協力を得ながら、要素となるシステムの開発・実証実験を進めている。

 当社は、本プラットフォームによって、24時間365日、どこに住んでいても、いつでもモノが届く、オンデマンド社会の実現を目指している。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

 次世代「島国型」ハイブリッド無人物流プラットフォーム
 URL: https://www.kamome-air.com/

サービスやビジネスモデルの概要

 当社は、本プラットフォームをベースに物流サービスを提供する。当初の輸送対象は、重量が軽く必要度が高い医薬品を計画しており、開発中の無人航空機が完成する2018年内に実証実験を行う予定である。

 輸送形態としては、輸送依頼元からの個別オーダによる24時間365日対応のオンデマンド輸送に加えて、複数の依頼元からの注文が一定数集まった時点で一括配送を行うまとめ買い型を計画している。後者の形態では、輸送費を発送元が負担する形態が考えられる。また、片道だけではなく、双方向の輸送に対応することによってコストを下げることも計画している。例えば、医薬品を運んだ帰りに検査の検体を輸送する、日用品を運んだ帰りに島の特産物を輸送するなどが考えられる。

 無人航空機による輸送の実証実験に関しては、当初は目視圏内エリアで行う。これは、法規制対応を早期にクリアするためであるが、システムは自律飛行機能など、目視圏外の運行にも対応している。そのため、目視圏内運行での実績を積み重ねた後に、最終的な目標である目視圏外エリアへの無人自動配送を実現する。

 離島への輸送と一口に言っても、実際に求められるサービスは島毎に異なる。そのため、将来の事業化を見越して、サポーターチーム「かもめーず」を立ち上げた。かもめーずには無人物流の実証実験をサポートいただくと共に、島の交通網、船の料金、物流ルートや無人航空機用の離着陸用地など、事業化に関わる事項の調査をいただいている。

内容詳細

 本システムは、概要図に示す通り、以下の要素から構成される:

  • 無人航空機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle) – KamomeAir
  • 無人輸送船(UMV: Unmanned Marine Vehicle) – Donbura.co
  • 無人輸送車(UGV: Unmanned Ground Vehicle) – Smart.ONBA
  • 統合運行管理および、気象データ収集システム – KAZAMIDORI
説明図

システムの概要図

 

開発中のKamomeAir : 垂直離着陸型(VTOL)固定翼無人航空機

開発中のDonbura.co : 無人輸送船 

 陸海空を統合したハイブリッド物流システムの中核となる、KAZAMIDORI(統合運行管理システム)では以下の機能を開発している。

  •  利用者(店舗もしくは荷物の受取人)からの輸送依頼受付
  •  荷物の重量・大きさ、配送時間の優先度、気象条件などを加味し、最適な輸送手段(UAV, UMV)の選択、航路・運行日時の選択を行うスケジューリング
  •  輸送中の機体・船体の監視を行うテレメトリ
  •  機体・船体に取り付けたセンサや、固定のモニタリングスポットに配置した気象センサによる気象状況のリアルタイムモニタリング
  •  気象モニタリング結果によって、リアルタイムに航路を変更するリルート

 これまで離島の住民は、定期船の運行が終了する夕方から翌朝までは、自治体の防災ヘリや緊急艇を出動させるような事態を除いて、物資の輸送手段を持ちえなかった。本サービスによって、離島住民が24時間365日オンデマンドで生活物資の配送を受けられるようになる。これによって、離島住民の生活を大きく改善することが可能になると共に、島の魅力をアピールし観光資源として活性化することも期待できる。

概要図

 本プラットフォームによる、陸海空を統合した輸送ルートのイメージを以下に示す。

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 無人輸送を担う、無人航空機・無人輸送船・無人輸送車や、本土や各離島の港に設置する気象観測装置から、動態管理情報や気象情報を、数秒~30秒周期で収集している。気象観測装置より収集するデータは「風速、風向、気温、湿度、気圧、雨量」など、無人輸送機からは、緯度・経度・機体状況(バッテリー残量等)・積み荷ステータスなど、運行に必要な最低限の情報を収集し運行に利用する。データ量が大きくなる、モーターの回転数、加速度など自律制御に関するデータについては、ログ情報として機体内部のメモリーに蓄積し、運行後にまとめて収集している。

 観測スポットは4Gモバイル網、またはサブGHz特定小電力無線ネットワークでKAZAMIDORIに接続されており、観測データをスマートフォン等に表示できる。本機能は、リアルタイム気象情報サービスとして個別に提供を開始した。工事現場などにセンサを設置し観測スポット化することによって、リアルタイムの気象状況を監視することができる。

固定観測スポット

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 事業開始当初、資金の確保に苦労した。2014年に男木島で起業した際はフリーランス、その後会社組織を作りベンチャー企業として活動しているが、起業当初は実績がなかったため、銀行融資は受けられなかった。そこで、クラウドファンディングを利用してようやく最初の事業資金を確保できた。

 本プラットフォームの開発に当たっては、パートナー企業に協力を仰いでいる。パートナー企業を選ぶ際は、関連技術を有する会社にコンタクトを行い、本プロジェクトの意義や思いを説明し、賛同を頂くことでプロジェクトに参加いただいている。

 例えば、無人航空機に関しては以下の基本要件を提示してパートナー企業を探した:

  •  バッテリー交換なしに離島への往復運用ができる航続距離を持つこと
  •  航続距離を得るためには有翼機が必須となるが、狭い離島で離着陸を行うために、滑走路が不要な垂直離着陸機(VTOL: Vertical Take-Off and Landing)であること
  •  輸送の効率性を加味して、5kgの搭載重量を持つこと

 国内のドローンメーカ全てにコンタクトしたが、この要件を満たせる会社が存在しなかった。そのため、海外のドローンメーカに範囲を広げ、数十社とコンタクトを重ねた結果、スロヴェニア共和国のAirnamics社との共同開発にこぎつけた。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 パートナー企業との共同開発にあたり、現在の法規制、2020年での実現可能性、日本の離島で使えることを軸に、基本要件を当社から提示しとりまとめを行っている。例えば、無人航空機の搭載重量に関しては、機体の運用性(大きすぎる機体は運用が困難)、コスト・開発難易度、法規制(機体総重量によって決まるカテゴリ)を加味した結果、5kgを選択した。

 最終的な目視圏外への自律無人飛行に対応するため、無人航空機には耐空証明が取れるレベルの安全性を確保している(搭載コントローラの冗長化、緊急時にパラシュートを使用して不時着する機能など)。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 プロジェクト初期にドローンを試作し、これを使用した実証実験を行った結果、航続距離や搭載重量などの見極めができ、現在の無人航空機の開発要件にたどり着いた。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 離島に居住する高齢者が、簡単に注文を行える仕組みを統合管理システム上に構築したい。従来のネットショッピングではスマートフォンを用いて注文を行うことが一般的であるが、高齢者はスマートフォンを所有していないケースが多い。そのため、ボタンを押すことによって簡単に注文ができる機能(Amazon Dashボタン相当)の開発を計画している。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 インドネシア・フィリピンなども数多くの離島を有する国であるため、将来的には本プラットフォームを輸出したい。

 

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株式会社 かもめや