掲載日 2021年07月19日

モビリティ変革コンソーシアム

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 収集情報を活用した付加顧客サービス提供
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング
  • 収集情報を活用した新規事業の発掘

【活用対象】

  • 自社の部門内で活用
  • 自社の複数部門あるいは全体で活用
  • パートナー企業含めたグループ内で活用
  • 社会全般を対象に活用

IoT導入のきっかけ、背景

 モビリティ変革コンソーシアムは、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が、単独では解決が難しい社会の課題や次世代の公共交通のあり方について、オープンイノベーションによる変革を実現する場として設立した組織である。

 近年、人口の減少、働き手不足が社会に大きな影響を及ぼしている。加えて、自動運転などの新たな技術の進展も著しい。こうした社会や技術の変化によって、鉄道事業を取り巻く環境も大きく変化している。加えて、コロナ禍によって変化の速度が加速している。

 従来から「集中・会社中心・マス」に代表される社会構造が「分散・生活中心・パーソナル」に変化することが予測されていたが、この流れがコロナ禍で一気に加速した。テレワークがコロナ禍で一気に進んだのと同様に、働き方や暮らしの変化が社会全体で進んでいる。

 こうした変化に対応したモビリティの新たな価値を創造するためには、一社で課題決策の検討や提案を抱え込むことは必ずしも効率的ではない。むしろ、オープンな場で議論し、参加者が得意領域を持ち寄って新たな価値創造につなげるオープンイノベーションの手法が有効である。そのため、JR東日本初の試みとして、2017年9月5日に「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げた。

 本コンソーシアムでは、交通事業者、国内外メーカー、大学、研究機関などが連携し、互いに力を合わせることによって社会課題の解決に取り組んでいる。

 

IoT事例の概要

名称、関連URL

モビリティ変革コンソーシアム
コンソーシアムURL: https://www.jreast.co.jp/jremic/

今回紹介した実証実験のURL

・案内 AI みんなで育てようプロジェクト」共同実証実験開始について
 https://www.jreast.co.jp/press/2018/tokyo/20181118_t01-.pdf

・案内AIみんなで育てようプロジェクト フェーズ2
 https://www.jreast.co.jp/press/2019/tokyo/20190618_to01.pdf

 

活動の概要

 モビリティ変革コンソーシアムでは、課題解決につながる新たなアイデアや技術をJR東日本が提供する駅・列車などの場で実証し、結果のフィードバックを行い改善するというアジャイルな形でイノベーションの実現に取り組んでいる。

 コンソーシアムの会員には、運営会員(ワーキンググループ会員)と一般会員があり、運営会員になっていただくと、ワーキンググループのメンバーとして特定テーマでの調査・実証実験などを推進することができる。

 実証実験はワーキンググループ参加会員の提案をトリガーに議論を開始し、複数の会員が参加して行うことを基本としている。複数会員が参加することによって、多くのアイデアや技術が融合する化学反応が起きて、より有用なソリューションとなることを狙ってこの形をとっている。

 図1にモビリティ変革コンソーシアムの体制図を示す。

図-1  モビリティ変革コンソーシアムの体制図
(出所:JR東日本提供資料)

 

実証実験の事例

 モビリティ変革コンソーシアムで取り組んだ数多くの実証実験の一例として、案内AIロボットの実証を紹介する。この実証実験はFuture Technology WG(旧 ロボット活用WG)の活動として2回行っており、フェーズ1を2018年12月7日~2019年3月15日の期間、フェーズ2を2019年8月5日~2019年11月10日の期間に実施した。

 本実証実験では、駅でのお客様への案内業務をAIロボットに託すことができるかの実証を「案内AIみんなで育てようプロジェクト」として行った。現在のロボットはまだ複雑な対話には対応できないが、FAQ的な応対は正確でスピディーにできる。そのため、定型的な応答はロボットに任せ、人間はより心がこもったサービスに専念することによってお客様の利便性を上げることを実証の目的とした。
 

1)  案内AIみんなで育てようプロジェクト フェーズ1

 フェーズ1では、東京駅、浜松町駅、品川駅、新宿駅、池袋駅、上野駅という山手線内の主要ターミナル駅とホテルメトロポリタン(池袋)などの22カ所に、複数社のロボット(サイネージ、チャットボットを含む)を28台設置した。本実証に参加したメーカーは18社であった。(図-2を参照)

 実証の結果として、新たな FAQ 蓄積による回答率の向上や各設置箇所における質問傾向の把握などが成果として得られた。一方で、以下の課題があることも分かった。

  • AIロボットの実証実験を行っていることの認知度をより高めて、AIロボットに触れていただく機会を増やす必要がある。

  • 大画面のサイネージや音声によるユーザインタフェースを用意したが、周囲の目が気になり恥ずかしいとの理由から、利用を敬遠されたお客さまが少なくなかった。例えば、トイレの場所の案内は従来からのFAQであるが、ロボットが質問を復唱すると周りに聞こえてしまうため利用を敬遠する場合があった。

  • 多言語案内を充実する必要がある。

  • 「乗車案内」「駅周辺案内」や「飲食店情報」に関する具体的な質問は回答のバリエーションが非常に広いためAIによる十分な応答ができない場合があった。

図-2  案内AIみんなで育てようプロジェクトフェーズ1
(出所:JR東日本提供資料)
 

2) 案内AIみんなで育てようプロジェクト フェーズ2

 フェーズ2では、東京駅、浜松町駅、品川駅、新宿駅、池袋駅、上野駅、横浜駅というJR東日本の首都圏主要駅に加えて、東京モノレールの羽田空港駅などの30カ所に、複数社のロボット(サイネージ、チャットボットを含む)を35台設置した。本実証に参加したメーカーは14社であった。(図-3を参照)

 フェーズ2では、フェーズ1で得られた課題を踏まえて以下の改善を行った。

  • 認知度向上のために、一部の案内AIシステムを駅周辺地図などの付近に設置し、一元的に情報が得られるようにした。

  • 周囲の目を気にせずに利用できる環境整備として、一部のロボットにおいてディスプレイの小型化や受話器型スピーカーへの変更などを行った。

  • 多言語案内への対応として、日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語対応を行った。

  • 案内の充実として、乗換案内やレストラン案内などの外部情報提供サービスとの連携を行った。

図-3  案内AIみんなで育てようプロジェクトフェーズ2
(出所:JR東日本提供資料)
 

 フェーズ1を含めて一連の実証で分かったことは以下の通りであった。

  • 雑音が多い駅構内などでの音声認識の精度をより向上する必要がある。

  • 興味から雑談的な質問をされる方もあった。そのため、正確な回答を行う必要があるFAQへの対応に加えて、曖昧な質問への回答をどうするかを考える必要がある。例えば、曖昧な質問に対しては、AIが不適切な回答をする学習を行っていないかなど、AIの学習結果に対して人間がチェックを行う必要がある。

  • 現在はスマートフォンを使用した検索で多くの情報を得ることができる。そのため、AIロボットによる、ピンポイント・リアルタイムの応答でお客様の利便性を高めるユースケースは何かという点について引き続き深めていく必要がある。

 一連の実証で得られた成果や課題は、机上ではなかなか想定ができず、実証を行うことで初めて分かる貴重なものであった。

 

概要図

 モビリティ変革コンソーシアムは、コンソーシアムが目指す世界観として「ひと、社会、地球を“やさしさ”で包み込むまち=“WaaS(Well-being as a Service)”を掲げている(図-4を参照)。WaaSの考え方は、コンソーシアムのSmart City WGから出てきたもので、これをさらに発展させた形として、モビリティの変革を通じて「全ての人の個性が尊重され、つながり、豊かさ・信頼が広がる社会」の実現目指すという目標とした。

 WaaSの実現に向けて、2021年度からワーキンググループ(WG)を図-5に示す3つに再編している。

図-4  モビリティ変革コンソーシアムの目指す世界観
(出所:モビリティ変革コンソーシアムWebページ)

図-5  現在のワーキンググループ構成
(出所:JR東日本提供資料)
 

取り扱うデータの概要とその活用法

 扱うデータは実証によって変わるが、AIロボットの実証では、音声データ、複数言語を認識するための学習データ、応答に必要な対話シナリオなどがある。

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 活動成果の知財の扱いについて調整・配慮する必要があった。知財に関しては、NDA(守秘義務契約)を締結した上で、ワーキンググループ参加会員間で平等に共有することを基本としている。

 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • 参加者が課題解決につながる技術は何かを議論しながら相互によい影響を与え合う形で開発を行った。

  • お客様とのインタフェースをどのように組み上げていくかについて、参加企業の知見を生かして実証を行った。

  • フィールドでの実証で気づきが得られて、この気づきを次の実証にフィードバックし、新たな気づきや課題を得るという、アジャイルなプロセスを繰り返しながら進めている。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 実証実験から実装までの間にはまだ越えなければならないハードルがたくさんある。実証で得られた成果をどのように実装段階に進めるかのプロセスなどを整備していく必要がある。
 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 本コンソーシアムには、これまでJR東日本とのつながりがなかった多様な企業・大学・団体からの参加をいただき、立ち上げ時に想定した以上の盛り上がりと手ごたえを感じている。このコンソーシアムという場や機能を今後どのように強化して残していくかを考えている。
 

将来的に展開を検討したい分野、業種

 駅はJR東日本の大きなリソースである。駅に今までなかった機能を付加できる分野を開拓したい。その一つは今実証を行っているヘルスケアの分野で、駅に今までになかった機能を付加することを参加者との協創で実現したい。もう一つは移動そのものについて、列車での移動という価値をどのように高めていくかを、ポストコロナやWaaSの実現を見据えて検討していきたい。

 

本記事へのお問い合わせ先

モビリティ変革コンソーシアム事務局

e-mail :  info@jremic.jp