掲載日 2019年06月03日
GMOクラウド株式会社

GMOクラウド株式会社

【提供目的】
  • 生産性・業務改善
  • 事業継続性

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 IoT/AIによる日常生活や社会の変革が進む中、当社は、ITのチカラによって身の回りに起こるコトを変えるために、「コトをITで変えていく」というミッションを掲げて新たなサービスの開発に取り組んでいる。

 工場やビル管理の現場では、まだデジタル化が行われていない身の回りの業務が数多く存在する。例えば、日常的なメーターの点検や検針である。工場におけるメーターの点検は、設備の状態を監視し、生産を止めるようなトラブルの発生を防止するために重要である。一方で従来の作業は、担当者がメーターの設置箇所を巡回し、目視でメーターを確認、手書き台帳に記入した後、最終的にPCなどに入力して電子データ化することが多い。そのため、人による作業の効率化に加えて、メーターの読み取りや転記の際に発生し得る人為的なミスの軽減も課題となる。

 メーターの点検を自動化する方法として、スマートメーターの導入が考えられるが、設備の大幅な改修を要するため困難であることが多い。多くのメーターは既存の設備や配管などに組み込まれており、スマートメーターへの交換が容易にできないためである。

 そこで当社は、近年技術の進歩が著しいAIを用いた画像認識とスマートフォンの組み合わせに着目した。担当者が現場を巡回した際に、本サービスのアプリケーションをインストールしたスマートフォンを使用してメーターの写真を撮影すると、クラウド上のAI がメーターの値を認識し、Web上の台帳へ自動的に記録を行う。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名 : hakaru.ai(ハカルエーアイ)byGMO

URL : https://iot.gmocloud.com/hakaru-ai/

主な導入企業:国内の製造業および不動産管理業。β版の利用に応募いただいた全53社の中から製造業、ビル管理会社などの31社の企業にご利用、ご評価をいただいた。

 

サービスやビジネスモデルの概要

<画像解析AIで数値を読み取り、自動的にデータ化>

 多くの製造現場やビル管理において、日々行われているさまざまなメーターの点検業務。「hakaru.ai(ハカルエーアイ) byGMO」は、メーターを一つずつ目視で確認し、手書きで数値を台帳に記載、PCでその数値をデータ入力する…といった一連の業務を、スマートフォンのカメラ機能を使って効率化する。hakaru.aiは、現場の点検業務をAI(人工知能)で効率化するサービスである。

 hakaru.aiを使用することによって、スマートメーターへの買い替え・付け替えなどの大規模な設備投資をすることなく、図-1に示す業務の自動化・効率化を実現できる。

図-1 hakaru.aiによる効率化

 

 hakaru.aiは工場に加えて、公共料金のメーター検針が定期的に必要となるビル管理会社、温湿度の管理が必要となる生鮮食料品の店舗などにも適用が可能である。

 

ビジネスやサービスの内容詳細

(1)  hakaru.aiでできること

  • スマートフォンでメーターをパシャリと撮影するだけ。画像をAIで解析し、認識した数値データをWeb台帳へ自動的に記入する。
  • 対応メーターは、アナログ・デジタル・回転式(5桁タイプ)、アナログパネルメーター(電流計)、水道メーターなど種類も豊富。古いメーターでも読み取り可能である(写真-2を参照)。

写真-2 hakaru.aiの対応メーター

 

  • 利用時には、まず個々のメーターを識別するためのQRコードを作成し、プリントして貼るだけ(写真-3を参照)。名前シールを手軽に印刷できるキングジム社のロングヒット商品「テプラ」と連携し、アプリから簡単にQRコードのシールを印刷できる。そのため、現場の設備を停止せず、容易に導入が可能である。

写真-3 メーターの初回登録

 

  • 上記のQRコードとメーターを一緒に撮影することによって、メーターが扱う計測単位や測定レンジなどを識別する。そのため、異常値を検出した際は、管理者や担当者にアラートを通知することが可能である。点検作業時に現場で感じた異常をメモする機能も備えている。(写真-4を参照)。

写真-4 メーター点検とアラートの検出

 

(2)  主な機能

  • 対応メーター:アナログメーター・デジタルメーター・回転式メーター、アナログパネルメーター(*1)、水道メーター(*1)

    *1: 2019年5月現在はβ版として提供中。

  • スマホメーター点検(自動撮影モード/手動撮影モード)
  • 点検時刻スタンプ
  • 点検時メモ
  • AI解析
  • Web台帳 / 管理画面
  • 異常値アラート通知
  • 画像表示
  • 数値グラフ表示
  • 数値CSVファイル保存
  • 点検値の音声読み上げ機能
  • 電波の届かない環境でのオフラインモード(撮影後電波が届く場所から画像を送信しデータ化することが可能)

 

(3)  プラン・料金

 2019年5月現在では月額システム利用料とメーターあたりの月額利用料からなる導入しやすい料金プランを案内している。料金プランの詳細については、当社Webサイトを参照されたい。

 

概要図

 hakaru.aiの主要な利用シーンを写真-5に示す。加えて、Web台帳のイメージを写真-6に示す。

 

写真-5 hakaru.aiの主要な利用シーン

 

写真-6 Web台帳のイメージ

 

取り扱うデータの概要とその活用法

  • メーター画像、およびメーター画像からデジタル数値に変換したデータ

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • 当社はIoTに関するサービスをお客様と一緒になって開発するために「IoTの窓口」を設け、AIやIoT関連の展示会などで様々な情報発信を行っている。今回の事例では、展示会でメーターの点検に関するご相談をいただいたお客様と一緒に開発を進めた。開発の過程では、お客様の工場を視察させていただき、現場で実証実験(PoC)をさせていただいた。
  • AIの開発を行うためにはメーターの画像データが数多く必要となる。そのため、メーターの現物を集めて学習用の画像データを作成した。この画像データのアノテーション作業(*2)や、認識精度を高めるための学習モデルのチューニングは地道な作業の連続で苦労した。
  • 社内の研究開発による技術と、お客様ニーズを結びつけ、世の中に広めるマーケティングチーム、そしてお客さまと商談を行い販売する営業とタッグを組んで進めた。全社的に「One GMO CLOUD」という方針のもと、部署横断プロジェクトとしてAI・IoTに本腰を入れて取り組めた。
  • β版の段階から複数のお客様に評価していただき、フィードバックを得ることを重視した。その結果、当初は思いもよらなかった多くの要望をいただいた。こうした要望をいち早く取り込んで再度評価をいただくために、開発とリリースのスピードを重視した。

 

*2: 画像データにラベル付けを行い教師データにする作業

 

 

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • オープンソースのライブラリをベースに独自のメーター検出アルゴリズム、数値計測を実装。チューニングを重ねて精度を向上させた。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

  • 教師データ作成を効率化する手法を取り入れているが、データ収集やアノテーション作業の工数をさらに削減したい。また、学習モデルの構築やチューニングにかかる工数も削減したい。
  • 当社はクラウド・ホスティングサービスのためのインフラや運用ノウハウを有しており、hakaru.aiでもこれを有効に活用した。今後は、利用が増えた際の安定稼働や負荷を考慮しつつ、コストとのバランスが最適なインフラ構築を進めたい。
  • 今後の新たな事業についても、研究開発・PoCフェーズから、サービスリリースフェーズへ素早く移行できる全社的な体制構築を進めたい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • 対応メーター種類の拡大、据え置き型カメラ対応などを行いたい。
  • 不動産管理業や工場など各業種別の点検業務における課題を深掘りした機能拡充を行いたい。
  • API連携によるOEMや再販提供による提供先企業の拡大を行いたい。

将来的に展開を(他企業との連携を含め)検討したい分野、業種

  • GMOクラウドグループの各グローバル拠点と連携したマーケティング・営業の強化を行いたい。
  • 製造業向けSaaS等各種サービスとAPI連携しパートナーを拡充したい。

 

本記事へのお問い合わせ先

GMOクラウド株式会社 企画開発部 IoTマーケティングG  松平 恵美

e-mail : info@iotnomadoguchi.com

URL :  https://iot.gmocloud.com/hakaru-ai/​