掲載日 2023年04月12日

 

株式会社NTTドコモ

【事例区分】
  • IoT等を活用した企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
  • IoT等を活用した一般消費者向け製品・サービス等の提供
  • IoT等を活用した社会課題解決の取り組み
  • IoT等を活用した社会課題解決の取り組み

【関連する技術、仕組み、概念】

  • ビッグデータ
  • AI

【IoT等の利活用分野】

  • 運輸・交通

【IoT等の利活用の主な目的・効果】

  • IoT等を活用した社会課題解決の取り組み

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 携帯電話ネットワークは電話やメールをいつでも利用者に届けられるように、各基地局のエリアごと所在する携帯電話を周期的に把握している。当社は、顧客のプライバシーを厳重に保護しつつ、この仕組みを利用して推計した人口の統計データを「モバイル空間統計」という商用サービス名で2013年から提供している。この統計では、地域ごとに所在する人々の数や動きを時間帯ごとに把握することができる。しかも、「性別」「年代別」「居住市区町村別」の属性別に把握することができる。

 当社は、2020年1月からこのサービスをリアルタイム化する「リアルタイム版モバイル空間統計」の社外向け商用提供を開始した。このサービスでは、日本全国の10 分毎の人口の移り変わりをおよそ500mメッシュ単位で、属性別にほぼリアルタイム(約10分後、サービス提供は40分以内)に把握できる(図1参照)。このサービスを開発していた2017年に、その活用についても知恵を絞っていた。いくつかアイディアが出されたが、その一つが交通分野での渋滞予測であった。

図1:リアルタイム版モバイル空間統計の概要
(出所:NTTドコモ提供資料)

IoT等利活用の経緯(課題解決の鍵となる技術・アイディアの発想やビジネスパートナーとの出会い等活用に至った経緯)

 このアイディアが実用化につながったのは、学会で東日本高速道路株式会社(以下、「NEXCO東日本」)と出会ったことがきっかけである。NEXCO東日本と一緒に具体的な活用について検討し、リアルタイム版モバイル空間統計の人口分布とNEXCO東日本が保有する交通量・渋滞・規制などの実績データを使い、さらに当社が開発したAI渋滞予知技術やNEXCO東日本の交通工学の知見・ノウハウを掛け合わせることで「AI渋滞予知」の提供が可能になった。

 

事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

・  サービス名:AI渋滞予知
 https://www.driveplaza.com/trip/area/kanto/traffic/ai_traffic_prediction.html

・  サービスが導入された高速道路
 東京湾アクアライン及び関越自動車道(本格運用)、東名高速道路及び京葉道路(実証実験)

サービスやビジネスモデルの概要

 渋滞しやすい道や曜日・時間帯などは一般的に知られているものの、その規模やいつ始まりいつ解消するかは日ごとに異なる。「AI渋滞予知」は、リアルタイム版モバイル統計にAI技術を適用し、その日の人出の状況に基づいて帰りの交通渋滞の発生やその規模・時間帯などを予測する技術である。帰りの渋滞に影響する当日の人出を定量的に把握して予測するので、天候やイベント開催などによる影響を織り込んだ的確な予測ができる。13時に当日14時以降の30分ごとの渋滞の予測情報を無償で配信している(図2参照)。情報を閲覧した者は帰る時間を早める、あるいは遅くするなどその後の行動の参考にすることができる。

ビジネスやサービスの内容詳細

 「AI渋滞予知」は、次の2つのモデルを作成して実現している。一つは、リアルタイム版モバイル空間統計により得られた過去の人口分布とそれに対応するNEXCO東日本が保有する交通量との関係を、機械学習技術によってモデル化した交通需要予測モデルである。もう一つは、交通需要と道路の通過に必要な所要時間の関係を、これも機械学習技術によってモデル化した所要時間予測モデルである。毎日の渋滞を予測する際には、その日の正午時点までの人口分布を交通需要予測モデルに入力して当日の交通需要を予測し、さらに所要時間予測モデルを用いて当日の所要時間を予測対象区間毎に予測している(図3参照)。

図2:渋滞の予測情報の表示例(関越自動車道:スマートフォン版)
(出所:NTTドコモ報道発表資料)

 

図3:AI渋滞予知技術の概要
​​​​​​​(出所:NTTドコモ提供資料)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

(モデル作成に用いた学習データ)

  • リアルタイム版モバイル空間統計により得られた過去の人口分布
  •  首都圏近郊では概ね2km間隔で高速道路に埋め込まれている「トラフィックカウンター」と呼ばれる計測器で収集した過去のデータ(通過する車の台数、車の速度など)
  •  過去の事故に関する情報(事故渋滞した日のデータを学習データから除くことに利用)

 (渋滞の予測に用いたデータ)

  •  リアルタイム版モバイル統計で収集した人口分布

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事業化への道のり

IoT等による価値創造

 利用者からは渋滞ピークを避け快適に走行できる点が評価され、高速道路利用のリピート率向上につながっている。また、帰宅時間を遅らせる利用者が多く、外出先での滞在時間増加が消費増加につながっている。さらには、渋滞緩和によりCO2排出量の削減にもつながっている。

 「AI渋滞予知」は、実証実験段階のWebアンケート調査で約9割の利用者から高い満足度を得る、9割以上の利用者から今後も使いたいという意向を得るなど、当初の予想以上に受け入れられたと感じている。

IoT導入や事業化時に苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 人出が増えると渋滞が増えるのは確かであるが、モバイル空間統計のどこのメッシュの人口が増えると渋滞につながるのかが当初は分からず、人手でメッシュを選択し機械学習のアルゴリズムを改善した。これはモバイル空間統計の性格上、人口増加の要因が渋滞に関係する車による人出なのか、それとも渋滞には関係ない列車等による人出なのかが区別がつかないからである。また、NEXCO東日本が保有する交通量・渋滞などの交通データを機械学習に適した形式に加工することも大変だった。

 また、ユーザからの「昼食を食べた時に午後の予定を決めたいので、13時に予測情報を配信してほしい」「何時から何時まで渋滞する、何km渋滞するという形式の情報提供は分かりにくい」という要望に応え、配信時間を14時から13時に1時間早めるとともに、現在の時間帯別の情報配信に変更している。

重要成功要因

 解決が望まれる社会課題の一つである道路渋滞に着目したこと、それから、交通工学の知見・ノウハウを持ち高速道路の渋滞という課題を解決したいと考えているNEXCO東日本と課題解決につながるICT技術を持つ当社が協働で解決策を検討したことではないかと考えている。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 プライバシーを保護するため、個人データを含むデータベースから統計値などを抽出する際に、その数値に乱数を加えることで正確な値を秘匿する「差分プライバシー技術」を開発した。また、膨大なデータを限られた時間で処理し、渋滞を予測するため、高速計算技術を開発した。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦

 「AI渋滞予知」を日本全国の高速道路に展開したい。現在は、高速道路ごとに予測モデルを開発しているので、これを汎用化し、どの高速道路にも適用できるようにしたい。また、将来的には一般道路にも展開したい。

技術革新や環境整備への期待

 海外を見てみると、公共交通機関の運行データ、民間企業が利用者から収集した交通渋滞情報、駐車場の情報などの交通ビッグデータがオープンデータとして流通している。我が国においても、このようなオープンデータの流通を促進する政策を一層強力に推進してほしい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 「AI渋滞予知」を日本全国の道路に展開するため、必要と考えられる関係者との共創を進めていきたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 「AI渋滞予知」は、外出先での消費増加につながっているので、この恩恵を受ける組織とマーケティングの観点からの連携について検討したい。

 

本記事へのお問い合わせ先

クロステック開発部

e-mail : mss-lite-ml@nttdocomo.com

URL : https://www.docomo.ne.jp/