掲載日 2019年12月18日

ダイキン工業株式会社

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 収集情報を活用した付加顧客サービス提供
  • 故障や異常の予兆の検知、予防

【活用対象】

  • パートナー企業
  • 企業顧客
  • 一般顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 

 快適なオフィスや店舗空間の提供に欠かせない業務用エアコンは、一台の室外機と複数台の室内ユニットから構成されている。室内ユニットの設置は、空間への露出を最小限にしかつレイアウトの自由度を高めることができる「天井埋込ダクト型」が広く使われている(図-1, 写真-2を参照)。

 空調機の室内ユニット内で発生した結露水の受け皿となるドレンパンは、経年や空気環境の影響によりカビやホコリ等の汚れが蓄積する。汚れが排水部に詰まると水漏れや空調機の異常停止の原因となるため、ドレンパンの汚れ度合いの定期的な目視点検や清掃が必要である。この作業は、通常ビルの設備管理業者が行っている。

 図-1のように、天井裏などに設置された室内ユニットのドレンパン点検は、各テナントの業務に支障のない時間帯での実施が求められるため、土日や早朝、深夜などの限られた時間の中でビル内を巡回して行う必要がある。特に複数の建物を同じ時期に点検する場合の作業工数は膨大で、近年の人手不足を背景に設備管理業者の負担が増大しており、点検作業の効率化や作業負担の軽減が急務となっている。

 そこで当社は、業務用空調機内部の汚れを自動検知し、IoTを活用して設備点検を省人化する「Kireiウォッチ」サービスを開発し、2019年10月に販売を開始した。

注:エアコンに組み込まれた皿状の盤のことをいう。冷却コイルが暖かい空気を冷却する際に発生する水分を受け止める役割を担っている。汚れが溜まりやすい箇所で、掃除をしないと水漏れや異臭の原因となる。

 

図-1 天井埋込ダクト形室内ユニットの設置例

写真-2 天井埋込ダクト型室内ユニットの外観

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

『Kireiウォッチ』サービス

https://www.daikin.co.jp/fcs/kirei_watch/

サービスやビジネスモデルの概要

 本サービスでは、室内ユニット内に設置した定点カメラがドレンパンを自動で撮影し、当社独自のアルゴリズムによる画像解析で汚れ度合いを判定する。

本サービスは初期費用0円、月額5,000円/台ですぐに始めることが可能である。

内容詳細

 本サービスでは、汚れ度合いの判定結果とあわせて清掃の推奨時期がパソコンやタブレット端末に通知されるため、現地でのドレンパンの目視点検をすることなく清掃スケジュールの策定が可能となる。加えて、ドレンパンの画像や汚れ度合いなど、収集したデータをクラウド上に蓄積し、過去10年分のデータをいつでも閲覧できるため、管理台帳や報告資料作成の効率化も可能となる。このように、本サービスによってドレンパン点検の実施に伴う工数の大幅な削減が可能となり、設備管理業者への負担軽減に貢献すると考えている。

概要図

 Kireiウォッチサービスの概要を図-3に示す。

 

図-3 Kireiウォッチサービスの概要

 

取り扱うデータの概要とその活用法

通信するデータとしては大きく3つあり、画像データ(jpg)、ログデータ、設定データである。

それぞれ、概要と活用方法を下記に説明する

  • 画像データ(jpg)

通信経路:上りのみ(エッジ→M2M)
概要:定期もしくは即時にて撮影した写真をM2Mサーバへアップロードする

  • ログデータ

通信経路:上りのみ(エッジ→M2M)
 起動処理や画像撮影時のログファイルをアップロードする

  • 設定データ
  • 通信経路:下りのみ(エッジ←M2M)
    撮影時間や画像の圧縮率などの設定値をM2Mサーバからエッジに対して設定する

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 サービスの企画から開発において複数の部署が連携するため、部門間のコミュニケーションや合意形成などが必要であった。技術的には、AWSを初めて使用し、サーバレスでのサービス構築に取り組んだため、AWS自体の理解にも時間を要した。

 開発期間としては、市場からの要望を受けてから構想段階を含めると3年、デバイスやアプリケーションの開発をおよそ2年で行った。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 ベンダー様と協業し、汚れ度合いを判定する画像処理、セキュリティを担保するための製造工程、通信品質をどう担保するかなどの開発に取り組んだ。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 IoTはデータ事業の側面もあることから、IoTを活用したサービスは、データが集ってこないと具現化・実現化することが難しい。今回提供している機能も、今後データが集まってくると再チューニングして精度向上などが必要である。

 

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 今後データが集まってくると既存の画像処理アルゴリズムによる汚れ判定ではなく、機械学習モデル(AI)を活用した汚れ判定も可能になってくる見込みであるため、そういった技術での精度向上や新たなセンサー類を設けることでの価値提供を図っていきたい。

 

将来的に展開を(他企業との連携を含め)検討したい分野、業種

 今回のサービスは室内環境ソリューションの第一歩と考えている。

「空調機に汚れを発生させない」「快適な空気環境を提供する」。こういった内容を達成できるようにサービスの裾野を広げていきたい。

 

本記事へのお問い合わせ先

ダイキン工業株式会社 サービス本部 小林 亮太

e-mail : s_eigyoukikaku@daikin.co.jp

URL :   https://www.daikin.co.jp/fcs/