掲載日 2018年09月19日
ボクシーズ株式会社

ボクシーズ株式会社

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング 
  • 新たなワクワク体験

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 一般顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 飲食店舗経営者は、深刻化する人手不足や増え続ける訪日外国人対応のため、顧客満足度を損なわずに店舗経営を効率化するという課題を抱えている。

 当社はこれらの課題を解決するため、独自のビーコン技術を活用し、店舗・テーブルと来店者をIoTによってつなげることにより、「注文0分、会計0分」という新たな飲食体験を提供する「Putmenu」サービスを開発した。本サービスでは注文・支払いをスマートフォン経由で行うことによって自動化し、店舗スタッフ作業の効率化を実現した。

 具体的には、表面数cm上に強い電波を発信することによって、テーブルや限られた場所の特定を可能とするPaperBeacon(ペーパービーコン)(*1) を開発し、テーブルをIoT化している。スマートフォンで注文を行った来店者が席につきスマートフォンをビーコンの上に置くと来店を確認し、注文情報とテーブル番号を店舗側に通知する。また、注文と同時にスマートフォン上で決済を完了する。

 このように、Putmenuでは、来店・注文・会計という個々の接客対応をスマートフォンアプリとIoTによってつなげ、来店者主導で進める一連の処理としている。これによって、来店者に注文や会計で待たずに済むという新たな飲食体験を提供すると共に、店舗業務の効率化を実現した。アプリは、12か国語に対応しており、訪日外国人は自国語でメニューを見て注文することができる。言葉の壁を気にせず、気軽に飲食を楽しむのに最適である。

(*1) PaperBeaconの概要: https://tagcast.jp/paperbeacon/

 当社は創業以来モバイルアプリケーションの受託開発を事業の柱としていたが、競争の激化により新たな成長領域を模索していた。この状況の中で、2015年にPutmenuサービスを自社で事業化することを決断し、開発を開始した。2015年12月の東京ジョイポリス内でのサービス開始を皮切りに、2016年を通して店舗経営者の要望を取り入れながら機能拡張を行い、2017年7月に現在のサービスが「ESOLA(エソラ)Shibuya」に導入され注目を集めることができた。これを契機に、2018年1月以降、大規模施設・フランチャイズチェーンに採用いただき導入店舗が拡大している。

 また、導入店舗で行った利用者へのアンケートでは、高い評価をいただいている。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

Putmenu
 

主な導入先(本記事執筆時点)

  • ESOLA(エソラ)Shibuya
  • ハウステンボス内の一部施設
  • イオンモール(幕張新都心のフードコート)
  • ケンタッキーフライドチキン(2018年4月から複数店舗で試験導入を開始)
  • 大戸屋(2018年5月から試験導入を開始)
  • リンガーハットTOKYO PREMIUM

サービスやビジネスモデルの概要

 サービスにはテーブルに配膳する店舗向けの「Putmenu TableOrder」、フードコートのようにベルを鳴らす「Putmenu BellOrder」の2形態がある。

 <Putmenu TableOrderでの利用形態>

  • 店舗全体をカバーするビーコンと、到達範囲をテーブル毎にしたテーブル設置ビーコン(PaperBeacon)の2種類を使用
  •  利用者がPutmenuアプリを起動すると近隣の対応店舗が表示され、行きたいお店を選び、メニューを閲覧する(メニューは12カ国語で表示が可能)(*2)

(*2): 本記事執筆時点で、英語、日本語、中国語(簡体/繁体)、韓国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、タイ語、カンボジア語、ベトナム語、ロシア語、スペイン語に対応済

  • メニューから注文したい飲み物・食べ物を選ぶ(この時点では注文は確定しておらず、2時間以内に来店しない場合は自動的にキャンセルされる)
  • 利用者が来店すると店舗のビーコンがスマートフォンと通信し来店者を認証
  • 利用者がテーブルに着席し、テーブルのPutmenuマーク(Pマーク)にスマートフォンをかざすことで注文が確定(テーブル裏面に写真のPaperBeaconがはりつけてある)
テーブル上のPutmenuマーク

PaperBeacon

  • 注文内容・テーブル番号が店舗のプリンターから印字される(日本語以外のメニューから注文を行った場合でも、日本語で印刷される)
  • 注文確定と同時に支払いも確定される(決済は、アプリに登録したクレジットカードの他に、携帯決済、LINE Pay、PayPal、アリペイに対応)

< Putmenu BellOrderでの利用形態>

  • フードコートではテーブル毎のビーコンは設置せず、施設全体をカバーするビーコンのみを設置する
  • 本ビーコンにて来店者を認証、注文を確定し各店舗のPOSレジに注文を印字する
  • 注文確定と同時に支払いも確定される
  • 料理完了後、店舗向けのタブレットからベルを鳴らし、来店者を呼び出す
Putmenuは、以下の価格で提供。
  • Putmenuサービス: 月額 25,000円(税別)~
  • テーブル設置用ビーコン(PaperBeacon):月額800円(税別)/テーブル
  • フードコート用のビーコン(TC-Beacon):月額500円(税別)/個

内容詳細

  • 利用者はスマートフォンのPutmenuアプリを利用し、来店前にメニューの選択と支払いができる(注文が確定するまで、支払いは仮の状態)
  • 利用者はメニューを選ぶ時間や店舗スタッフが注文を取りに来るまで待つ時間が不要となり、一緒に来店した仲間との会話を楽しむ時間が増えるなどの新たな飲食体験を得ることができる
  • 日本語でメニューや店舗の説明を登録すると自動的に11カ国語に翻訳され多言語メニューを作成できる。訪日外国人が店舗を気軽に利用できることに加え、外国語に堪能なスタッフでなくても接客が可能となる
  • 注文や支払いを来店者がスマートフォン上で行うため、店舗スタッフは、テーブルでの注文取りと厨房間の往復やレジ作業が不要になり、顧客体験を損なわずに作業の効率化が可能となる
  • POSデータだけでは得られなかった、ユーザ毎の消費行動をビックデータとして蓄積することによって、パーソナライズされたレコメンドやリピーター客への声掛けなどが可能となる

概要図

「注文・支払い~来店~注文確定」のイメージ
 
「店舗・メニュー登録~注文受付」のイメージ
 

取り扱うデータの概要とその活用法

  • お客様がその場所にいることを示す情報(テーブル着席、来店の情報)
  • お客様の利用ハードルを下げるために、ユーザ名・性別・年齢などの個人情報の登録は不要とし、アプリをダウンロードしたらすぐに使用できるようにしている(注文情報は、アプリ毎に付与するIDに紐付けて管理している)

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 Putmenuを構想した際に、事業化を複数の会社に提案したが理解いただけなかった。そのため、自社での開発と事業化を決断したが、開発資金の確保に苦労した。

 また、当社一社では全てをカバーできないため、POSレジはシャープマーケティングジャパン(旧シャープビジネスソリューション)、決済はソフトバンク・ペイメント・サービス、クラウドサービスは日本マイクロソフトの協力を得てサービスにこぎつけた。協業を提案した際に、当初はPutmenuの価値やメリットを理解いただけないケースがあったが、実際に動くプロトタイプを見せることができるようになると訴求力が上がり、協業が加速した。

 アイデアだけでなく、それを素早く具現化できるデザイン・開発チームを社内に有することが強みとなった。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 当社はビーコン技術のパイオニアである。AppleがiBeaconを提供した2013年8月より早い2012年12月にビーコン技術を発表し、ビーコン電波の強度に応じたアプリケーションの制御に関する国際特許を取得した(日・米・中・韓・欧)。Putmenuサービスで使用しているPaperBeaconはこの技術を使用している。

 ユーザーインターフェースのデザインやアプリケーション開発では、当社がモバイルアプリケーション開発で養った経験・技術を活用している。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 さらに開発を加速し、音声コマンドを使った注文入力や、AIを使ったビックデータ(蓄積した注文データ)分析等を実現したい。これによって、さらに利便性を向上させるとともに、来店者の分析による店舗経営や接客の支援を実現したい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 Putmenuを世界に通用する尖ったサービスに育てたい。既に店舗向けのシステムも12カ国語対応を行っており、海外展開の基礎はできている(最初にメニューを入力した言語から他の11言語に翻訳を行うため、例えば、英語を基本としたメニューを作成することも既に可能である)。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 Putmenuサービスによって、飲食店の運営を変革したいと考えている。その際に当社は、飲食店の運営に関わる既存のプレイヤーと競合するのではなく、既存プレイヤーとの協業を進め、Putmenuを通じて飲食店のバリューチェーンをつないでいきたい。

 そのために、飲食店を選択する入り口となる予約・クーポンなどのポータルサイトやSNSとの連携、Putmenuで受けた注文から食材の発注を可能とするバックヤードサービスとの連携などを進めていきたい。

 

本記事へのお問い合わせ先

ボクシーズ株式会社 Putmenu事業部 担当者
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