掲載日 2020年07月31日
ベイシス株式会社

ベイシス株式会社

【提供目的】
  • 事業・業務の見える化
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング
  • 最適経路・プロセスの選択

【活用対象】

  • 自社の複数部門あるいは全体で活用
  • パートナー企業含めたグループ内で活用

IoT導入のきっかけ、背景

 当社は2000年の創業以来、日本全国の携帯電話基地局やWi-Fi設備などの通信インフラの構築や運用に関する数多くのプロジェクトに携わり、現在はスマートメーターなど、IoT時代の新たなインフラ構築にも携わっている。

 IoTの普及が思うように進まないボトルネックの一つとして、当社は、IoT機器を広範囲に設置する際のコストがあると考えている。IoT機器設置工事のために、何万もの設置場所に出向くためのラストワンマイルのコストが、システム構築コストを押し上げるためである。

 当社でも、このラストワンマイルのコストは大きな課題であった。当社が電力会社から受注しているアナログメーターからスマートメーターへの交換工事では、新旧メーター間で電力使用量の引き継ぎを行うために、交換前のアナログメーターの指針値を記録する必要がある。この記録が間違っていると料金請求にも関わるためミスは許されない。そのため、現地作業員は作業現場での指針値の記録に加えて作業が終了すると事務所に戻って工事報告書を作成し、管理者がこれを1件1件見て値をチェックしていた。一方で、工事件数は1日あたり平均960件にも上り、作業員の報告書作成や管理者のチェックが大きな負担となっていた。

 そこで当社は、ICTを活用したプロジェクト管理ツールBLAS(Basis Listing Application System)の開発や作業プロセスの変革に取り組み、IoT機器設置工事の飛躍的な効率化に成功した。

 このように当社は、フィールド作業の管理工数や作業工数を減らして工事単価を下げることがお客様のIoT導入の課題を解決し、IoTがより普及しやすい世の中の実現につながると考えている。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

サービス名(ツール名称):BLAS(Basis Listing Application System)

 

サービスやビジネスモデルの概要

 冒頭に示した通り、スマートメーターへの交換工事は、1日あたり平均960件という量をこなす必要があり、多くの現地作業員が現場を巡回して工事を行う。その際の課題であった作業の効率化のために、以下のツールを社内開発した。

  • 多種多様な工程・情報を「リアルタイム」に共有・管理するBLAS。
  • AIによる画像認識やRPA(Robotic Process Automation)を活用したチェック作業の自動化。

 これらのツール導入による効率化を、現場と開発者の議論による課題の明確化、工程の分析、ツールの実装、現場からのフィードバックによる改善のサイクルを回すことによって実現した。

 

内容詳細

 具体的な効率化の実現事例を以下に示す。

(1)    BLASを使用した情報管理の効率化

 BLASの機能詳細を図-1に示す。最初に現地作業員は、BLASを使用して現場に出発する前に身だしなみ・持出工具の確認、コロナ禍においてはマスク着用、検温データについて事前登録を行う。作業現場に到着すると、スマートフォンを使用して、メーターのIDや交換前メーターの指針値、機器設置前後の写真などをBLASに登録する。このデータから作業報告を自動的に生成することによって、作業終了後の書類作成作業をなくした。また、現地作業員は報告書作成のために事務所に戻る必要がないため、移動の負担も軽減できた。

 作業管理に関して、従来は、工事スケジュールや周知事項を、現地作業員を抱える協力会社別に電話やメールなどで展開していたところを、周知・管理を全てBLASで行い、かつ進捗状況を一元管理できるようにした。これによって、管理者の作業も効率化している。

 こうした効率化によって、図-2に示す通り、スケジュール管理、進捗管理、報告書作成の工数を93%削減することができた。

 

図-1 BLASの機能詳細
図-1 BLASの機能詳細
(出所:ベイシス提供資料)

 

図-2 BLASの導入による工数削減効果
図-2 BLASの導入による工数削減効果
(出所:ベイシス提供資料
 

(2)    AIによる画像認識やRPAを活用したチェック作業の自動化

 スマートメーターへの交換を行った際は、写真-1に示すように、交換前のアナログメーターの「取外し指針値(写真-1の①)」を記録してメーター値の引き継ぎを行う。従来は、このメーター値を現地作業員が読み取り、手作業で「入力指針値(写真-1の②)」として記録していたが、この場合どうしても入力ミスが避けられない。そのため管理者は、報告書に掲載されたメーターの写真と作業員が入力した指針値を目視で確認することによってチェックを行っていた。(図-3の導入前を参照)

 工事件数が増大するとこの作業は膨大な数となる。ここで人員を増やすなどして従来のやり方を継続した場合、コストや作業期間の増加が避けられず、IoTを導入するお客様の目的にもそぐわない。そこで、AIとRPAを組み合わせて自動化することによって人手に頼らない作業を実現した。

 具体的には、AIによってアナログメーターの写真から取外し時の指針値を機械的に認識し、RPAが管理者に代わって入力指針値との照合および判定結果ファイルの作成と判定結果の通知を自動的に行う(図-3の導入後)。この自動化によって、指針値のチェックをはじめとした機器画像の確認工数を95%削減することに成功した。

 写真-1の「①取外し指針値」を見ると、大部分の方は“49618”と読み取るが、末尾1桁は8まで回りきっていないため、この場合は「②入力指針値」に示す通り“49617”と判読する必要がある。そのため、市販のOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)ソフトでは電力メーターの読み取りには対応できない。そこで、AIに電力メーター検針独自のルールを学習させることによってメーターの読み取りを実現した。
 

写真-1 電力メーター交換時の指針値 (出所:ベイシス提供資料)
写真-1 電力メーター交換時の指針値
(出所:ベイシス提供資料)

 

図-3 AI/RPAを使用した計器画像の自動判定
図-3 AI/RPAを使用した計器画像の自動判定
(出所:ベイシス提供資料)
 

(3)    三方よしの実現

 BLASは当初、社内の管理工数削減を目標に作り始めたが、今ではそれだけでなく、現地作業員を抱える協力会社の効率向上や作業員の負担軽減にも寄与している。加えて、当社に工事を発注していただいているお客様もBLASにログインできるようにしており、お客様もリアルタイムに作業の進捗状況を確認することができる。

 このようにBLASをはじめとする一連のツールによって、低コストで高品質、かつ現地作業員の負担が少ない工事を実現し、お客様・協力会社・当社の三方よしを実現している。

 

概要図

 BLASの利用イメージを図-4に示す

 

図-4 BLASの利用イメージ

図-4 BLASの利用イメージ
(出所:ベイシス提供資料)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

  BLASおよびツール群が扱う主要なデータは以下の通りである。

  • メーターの画像
  • 作業進捗などの現場情報
  • 工事スケジュールや作業員への周知事項、全体進捗などのプロジェクトの管理情報
  •  出発前登録情報(作業員の身だしなみ・持出工具、コロナ渦においてはマスク着用・検温データ)
     

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 BLASの活用にあたり、導入の目的とメリットを協力会社や現地作業員の方々を訪問して説明した。その際はスマートフォンを使用した作業管理など、新たな手法の導入に抵抗感もあったが、現地作業員のメリットを丁寧に説明し理解していただいた。導入の結果、もはやBLASがない現地作業は考えられないとまで評価していただけるようになった。

 BLASの開発は、初期は社外に委託していたが、現場の声をいち早く取り込んでより良いシステムにするためには、開発のスピードアップが必要と考え内製に切り替えた。開発は少人数のSEチームで行い、現場関係者の視点や考え方の相違からくる食い違いが発生しないように、丁寧なコミュニケーションを心がけている。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 AIを使用したメーターの読み取りの実現は、開発当時は先進的な取り組みで先行事例もなかったため苦労があった。ディープラーニングを使用したAIの開発に必須であるメーターの画像は豊富に存在したが、電力メーター独自の検針ルールを学習させるための教師データの作成や認識精度の向上に苦労した。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 BLASや一連のツールによるDXで大きな成果を得たが、現地作業員の作業パーターンなどを分析すると、まだ効率化できる点がある。そのため、さらなる作業の効率化と最適化を目指してBLASの新機能開発を進めている。

 これまでは、作業管理と現場の効率化に注力してデジタル化を行ってきた。今後は、顧客や協力会社との受発注などのデジタル化を進めることがDXの次のステップだと考えている。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 当社のビジネスはフィールド作業と切り離して考えることができない。そのため、ソフトウェアだけでは解決できない部分があり、そこにいかにしてテクノロジーを導入するかが課題であり、また可能性が大きい部分でもある。その一例として、作業員の安全管理を、バイタル情報のセンシング、AR(拡張現実)、RPAなどのハード・ソフト技術を組み合わせて実現することが考えられる。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 現地・現場作業のデジタル化、ロボット化の推進に、我々のシステムが連携しながら現場全体がさらに効率的かつ安全になる世界観を作りたい。そのために、ドローンやロボットなどのハードウェアメーカとの連携など様々な可能性がある。

 

本記事へのお問い合わせ先

ベイシス株式会社 経営企画:上條(かみじょう)

e-mail : otoiawase@basis-corp.jp

電話番号 :   03-5769-2141