掲載日 2018年11月20日
アンデックス株式会社

アンデックス株式会社

【提供目的】
  • 生産性向上、業務改善
  • 事業継続性
  • 事業の全体最適化
  • 新規事業、経営側面

【活用対象】

  • 企業顧客

IoT導入のきっかけ、背景

 三陸沖は親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかる潮目であることから、世界でも有数の漁場として知られ、水産業が盛んである。当社は、宮城県仙台市を拠点とし、アプリケーション開発を主な事業としているが、新規事業開拓の一環として、地域の有力産業である養殖業へのIoT活用にチャレンジした。
 養殖の収量や品質に密接な関係がある海水温・塩分濃度の測定は、毎回船を出す必要があるため、手間となる上、十分な回数の測定ができない。そのため、データの粒度が荒く変化を読み取りづらい。また、測定結果は漁師が自分のノートに記載する形であるため、確認したい時にそれができないことが多かった。
 海苔養殖の場合、育苗期(*1)に海水温が下降しない時は、海苔の枯死が発生するため、海水温の監視が重要である。そのため、従来から、海水温と比重(塩分濃度)が漁業協同組合(漁協)から提示されていたが、データが限られたモニタリング点で測定されており、漁師の養殖漁場と一致しないことから、作業の判断材料にならない場合もあり、漁師の間では、自分の漁場のデータを常に把握したいという要望があった。

(*1): 漁師が最も神経を尖らせると言われる、9月末~10月の、養殖で使用する海苔網に海苔の胞子を付着させる時期。

 そこで、各種センサと通信モジュールを搭載したICTブイを自分の漁場近くに設置し、30分〜1時間間隔で漁場をモニタリングするクラウドサービス、収集データを表示するスマートフォンアプリ「ウミミル」を開発・提供している。導入いただいた漁師の方々には、海の状態をデジタル化するメリットを実感していただき、「もう以前のノートを使ったアナログの養殖には戻れない」という高評価をいただいている。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

 サービス名:ICTブイ、アプリ名:ウミミル
 関連URL:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/service/ict_bui/
 (NTTドコモWEBページ)
 主な導入先:海苔、真珠、牡蠣等の養殖を行っている漁協、マグロ養殖企業、他

サービスやビジネスモデルの概要

 本サービスでは、海上に設置したICTブイから、測定データをクラウドに送信する。ICTブイの設計・製造はセナー&バーンズ社、クラウド及びクライアントアプリケーション開発、サーバーの運用を当社で行っている。加えて、本サービスの営業・販売はNTTドコモが行っている。このように、関係する各社と連携することによって、サービスの提供と運用を実現した。
 ICTブイの設置は漁協単位で行うことが一般的で、漁協が本サービスを導入する。組合員である漁師は、自身のスマートフォンにて、いつでも海の状態を確認することができる。

 

図-1 ウミミルアプリ画面のサンプル
図-1 ウミミルアプリ画面のサンプル
図-1 ウミミルアプリ画面のサンプル
図-1 ウミミルアプリ画面のサンプル

 

内容詳細
 海上に設置するブイは、センサを設置する深さによって、I型とII型(浅海用)の2種類を提供している。写真-2, 3にICTブイの外観を示す。

写真-2 ICTブイI型
写真-3 ICTブイII型
写真-2  ICTブイI型                    写真-3  ICTブイII型

 

 ICTブイとウミミルは、海のデータを可視化して提供し、漁師が次に行うべき対応を決めるのに使われている。本サービスを使用することによって、従来は漁師の勘と経験に頼っていた海の変化への対応を、以下の例に示すように、データに基づき的確に行うことが可能になる。

  • 塩分濃度の低下や栄養塩(*2)の低下によって、海苔が色落ちし価値が下がってしまうため、海苔が十分に育っていれば、影響が出る前に収穫する
  • 海水の塩分濃度が低下すると、海苔の新芽が育たない可能性があるため、濃い塩水を散布することによって対応を行うが、このタイミングを見極めることができる

(*2): 植物プランクトンや海藻の栄養となる海水中に溶けた、けい酸塩・りん酸塩・しょう酸塩・亜しょう酸塩等を総称して「栄養塩」という

 ICTブイでは、ブイのメンテナンスに新しい方法を採用して費用の低減を図った。海洋ブイは従来から、航路標識用に加えてICTブイと同様の海中観測用ブイも存在したが、運用費用にはブイを定期的に陸揚げして、バッテリー交換等のメンテナンスを行う費用が含まれていたため非常に高価である。

 ICTブイでは、バッテリー(乾電池もしくは二次電池)の交換とセンサーメンテナンスを、漁師が海に出た際に行うことによって、メンテナンス費用を削減した。このアイデアは、ICTブイは船や網等の漁具と同様に、漁師自身が手入れできるものにしたいという考えから来ている。

 

概要図

 本サービスの提供形態を図-3に示す。

図-3 サービスの提供形態 【出所】ドコモのICTブイ紹介Webページより
図-3 サービスの提供形態
【出所】ドコモのICTブイ紹介Webページより

 

取り扱うデータの概要とその活用法

 ICTブイでは、以下のデータを収集している。

  • 海中の環境データ:海水温、塩分濃度、クロロフィル濃度、濁度、溶存酸素量等
  • ブイの監視データ:バッテリー残量等

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 水産業は当社にとって、初めて取り組む異分野領域であった。そのため、課題の洗い出しや顧客開拓を、技術会社である当社のみで行うことは困難であった。そこで、技術・販売面で協力いただける企業・団体、及びユーザである漁師との関係構築を模索しながらプロジェクトを進めた。具体的には以下の活動を行うことによって、この課題を解決することができた。
 先ずは、水産業へのICT活用を行なっている事例をネットで調べてコンタクトを重ねた。そうした中で、既に、海洋ブイを使用した漁場のモニタリングを行っていた、はこだて未来大学の和田 雅昭教授に出会い、貴重な助言と協力を得ることができた。
 本サービスを漁師にとって使い易いものにするために、漁師の声を直接聞きたいと考えた。そのため、宮城県水産漁港部から宮城県漁業士会南部支部に、和田教授が行っていたユビキタスブイの活用例を紹介していただき、水産ICTに興味がある漁師を募った。この取り組みによって、監視するデータの種類や収集周期を決めることができた。
 販売面ではNTTドコモとの協業を行った。協業のきっかけは、当社の情報発信がNTTドコモの目に留まったことであった。当社は、みやぎモバイルビジネス研究会(MiMoS)に立ち上げから関わり、事務局を担当している。MiMoSで、和田教授との「水産xICT」の取り組みに関する情報発信を行っていたが、これが、ICTの活用により震災復興(当時は折しも、東日本大震災からの復興時期であった)に貢献したいというNTTドコモの意向と合致し協業が実現した。NTTドコモからは、2015年にコンタクトがあり、2016年の共同実証実験を経て、2017年にサービス開始にこぎつけた。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 ウミミルは、データ分析の専門家ではない漁師にも分かり易いユーザインタフェースを重視した。そのためのユーザインタフェースのデザインは、当社の既存事業であるスマートフォン向けアプリケーション開発の経験を生かして行った。
 ICTブイに関しては、ブイメーカーもデータ通信モジュールを搭載した小型ブイの開発経験がなかったため、NTTドコモの協力を得て、機能・性能の確認を実証実験で行いながら開発を進めた。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

 今後は、取得したデータを販売することを考えている。例えば、AIを使用した水産ソリューションを提供したいが、学習データを用意できない大手ICTベンダーにデータの販売を行いたい。また、当社でも機械学習を活用し、予測等によってサービスの価値を高めることも検討したい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 情報の販売に必要なデータ流通ビジネスに関わるプレイヤーとの連携を行いたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 大学や水産研究所との連携を強化し、安定した収量を得るためのデータ活用について、学術的見地からの検討を深めたい。

 

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