
SAS Institute Japan 株式会社
- 企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
【関連する技術、仕組み、概念】
- IoT
- AI
【利活用分野】
- 製造(食品)
- 製造(化学)
- 製造(機械)
- 製造(電機)
- 製造(医療)
- エネルギー・鉱業
【利活用の主な目的・効果】
- 生産性向上、業務改善
- 事業継続性向上
- 事業の全体最適化
事例の背景
課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)
熟練者の高齢化や引退が進むなか、「どうしたら熟練者が張り付かずとも、製造現場で起きる日々の問題に現場で対処できるようになるだろうか?」という課題を本事例では扱います。
多種多様な製造設備についてのパラメータ設定や、発生する現象を表す微妙なデータの解釈といったものはナレッジとしての蓄積や継承が難しいものです。製造設備の知識、過去に発生した事象に対する対応の経験、目の前で起きている事象を的確に捉える感覚などが総合的に求められます。
IoT等利活用の経緯
これまでIoTのセンサーデータを収集して可視化する試みが多く行われてきました。ですが、意味するところを適切に表現するモデル化や、モデルから出力される結果を知識と照らし合わせて意思決定を行うといったIoTデータの本来の利用目的の達成には、一定の難しさがあったのではないでしょうか?
本事例では、こうしたIoTデータ活用の一つのモデルとして、IoTデータを分析して対応が必要な特徴をリアルタイムに抽出し、生成AIを活用して適切な対応指示を行えるようになった実例を紹介いたします。
本事例では、一例として、現場エンジニアの意思決定を支援する予知保全を取り上げています。
IoT事例の概要
サービス名等、関連URL、主な導入企業名
サービス名:SAS Retrieval Agent Management
URL : https://www.sas.com/en_us/software/retrieval-agent-manager.html
サービスやビジネスモデルの概要
本事例で紹介したソリューションは、SASのSAS Analytics for IoTならびにSAS Retrieval Agent Managementを組み合わせたものです。
提供形態:Kubernetes(Azure AKS, AWS EKS, オンプレミスKubernetes等)への展開
Kubernetesの持つ拡張性、柔軟性を活用し、適正規模から開始して、必要に応じて利用範囲を拡大
頂ける構成で提供しております。
直接販売または弊社パートナー様を通じての販売
導入状況:USを中心にグローバルで導入
ビジネスやサービスの内容詳細
稼働中の機械に取付けられたセンサーデータ、それらをAI/機械学習モデルにより処理して得られるデータとナレッジとして蓄積した企業固有の文書(マニュアル、不具合レポート、設備仕様)を組み合わせて、現場担当者向けに、発生中の問題と必要な対策について、理由とともにレポートとして提示します。それにより、現場担当者は、早期に問題に対処することができるため、影響を最小限に抑えることができます。本書では問題発生前の対応を可能とした事例を紹介しております。

図1:監視対象の装置(出所:SAS提供資料)

図2:アーキテクチャ概念図(出所:SAS提供資料)
取り扱うデータの概要とその活用法
以下の文書に基づいた作業指示を、チャットやレポートに作業指示として出力する際にRAGを活用します。
- 製造設備装置の取り扱い説明書(マニュアル)
- 使用部品のデータ
- 過去のメンテナンス記録
また、製造装置に取り付けたセンターデータを異常に対する予兆検知の学習、実行時推論データとして活用します。
事例の特徴・工夫点
価値創造
生成AI応用としてOpenAIやGemini, LlamaといったLLMの実装から固有のナレッジを踏まえた回答を得るためにRAGは広く活用され始めています。本事例ではRAG出力に文書だけでなく、IoTデータのリアルタイム分析出力を、RAGからの引用やLLM問い合わせに活用しています。それにより、異常の発生時点やその兆候が現れた時点での対応を可能とし、計画外の製造設備装置の停止を回避しています。所謂チョコ停、ドカ停といった問題が発生する前に対応できるだけの情報を提供することで、製造過程での損失を予防しています。
苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間
ベクトル埋め込み表現を量子化・圧縮する、弊社の独自技術がRAGに使われており、大量の文書をベクトルDB化する際に、メモリー消費の低減と近傍探索速度のスピードアップを図っています。システムコストを抑えながら、高速に結果を返すRAGの導入につながると考えております。
重要成功要因
RAGを実際に、現場で使っていただくために導入の敷居を下げることが必須だという考えにより、プログラミングスキルが無くても利用いただけるよう、ノーコード・ローコードのインタフェースを提供しております。主にPython言語でプログラミングしなければならなかったところを、Pythonプログラマでなくても、導入できるようにしています。
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
RAG部分において、大量の文書をベクトルDB化する際に、メモリー消費の低減と近傍探索速度のスピードアップにつながる量子化が行われています
今後の展開
現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦
本事例の生成AI技術はいわゆるRAG(Retrieval Augmented Generation)の応用分野となります。RAGにおいては蓄積されるナレッジや、プロンプトと呼ばれるLLMへの問の質が狙った出力を得るために重要となります。
このうち、特にプロンプトに含まれる情報の分析を通じて信頼できる形で安定的に提供できるかが、利用者の役に立つ情報提供となるかどうかのカギとなります。
現時点は製造業の状態監視のためにSVDDやMTSなどの異常検知モデルを活用していますが、幅広い業種に活用できる仕組みであることから、ユースケースごとに適切なモデルを開発して応用分野を広げて行きたいと考えております。
強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動
IoTで集められているデータと、業務課題との橋渡し、弊社が得意とするデータ&分析のユースケース適用
将来的に展開を検討したい分野、業種
IoTのセンサーデータなどに代表されるストリームデータと、そのデータを活用した分析や文書の参照が必要なエリアであれば汎用的に展開したいと考えております。
具体的には以下の分野での取り組みを進めております
- 金融
- 保険
- 官公庁
- ヘルスケア
- 製造業
- 通信
本記事へのお問い合わせ先
SAS Institute Japan 株式会社 グローバルIoT事業本部 担当:川田 創
e-mail : Hajime.Kawata@sas.com
TEL:03-6434-3847
