掲載日 2025年03月10日

 

株式会社RevComm

【事例区分】
  • 企業・自治体等向け製品・サービス等の提供
  • 社会課題解決の取り組み

【関連する技術、仕組み、概念】

  • ビッグデータ
  • AI
  • 4G
  • 5G

【利活用分野】

  • 音声コミュニケーションに対する支援が必要なあらゆる業種

【利活用の主な目的・効果】

  • 生産性向上、業務改善
  • サービス・業務等の品質向上・高付加価値化、顧客サービス向上
  • 事業継続性向上
  • 事業の全体最適化
  • 新規事業開拓・経営判断の迅速化・精緻化

課題(注目した社会課題や事業課題、顧客課題等)

 株式会社RevComm(以下、当社)は、「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る。」という理念のもと、音声技術とAIによりコミュニケーション課題を解決する企業である。社名のRevCommはRevolution+Communicationからきている。音声解析AI「MiiTel」を搭載した電話解析AI「MiiTel Phone」、ウェブ会議解析AI「MiiTel Meetings」、対面会話解析AI「MiiTel RecPod」などの提供を通じて、コミュニケーションが発生するすべての場所における会話のビッグデータ化をめざしている。

 これらの開発にあたって注目したのは、テキストコミュニケーションがさまざまなデータ分析の対象となり大きな価値を生んでいるのに対し、音声コミュニケーションはそうではないこと。音声コミュニケーションをデータ化することによって、例えば電話でのインサイドセールス注1の成約率をあげるなどさまざまな価値を生むことができると考え、これに挑戦した。

 幸いなことにMiiTelは2018年10月のリリース以来、お客さまから商談獲得率がアップした、トップ営業の話し方の特徴を分析・可視化し研修に活かすことができたなど、評価をいただいており、2024年6月末の時点で導入社数は2,500社、累計ユーザ数は80,000ユーザを超えている。また、MiiTelは、一般社団法人日本クラウド産業協会のASPICクラウドアワード2024の最優秀サービスとして、総務大臣賞を受賞している。

関連URL:https://www.aspicjapan.org/event/award/18/index.html

注1:マーケティングの手法の一つ。見込み客に対して電話やメールなどの非対面のコミュニケーション手段を用いて案件化する手法。

 

AI等利活用の経緯(課題解決の鍵となる技術・アイデアの発想やビジネスパートナーとの出会い等活用に至った経緯)

 音声認識の精度向上という課題解決の鍵となったのは、深層学習やTransformer注2の登場である。これらの技術の活用によって音声認識の精度があがり、実用に耐えるレベルとなった。このようなタイミングで音声解析AIの開発に必要なエンジニアをタイムリーに集めることができ、音声認識精度の向上という果実を素早く音声解析AI「MiiTel」に取り入れることができた。

注2:自然言語処理における深層学習モデル。GPT、BERT、PaLMなど言語系生成AIのベースとなっている技術。

 

事例の概要

サービス名等、関連URL、主な導入企業名

音声解析AI「MiiTel」

関連URL:https://miitel.com/jp/

サービスやビジネスモデルの概要

 当社はビジネスにおけるあらゆる会話を蓄積、解析し、コミュニケーションのあり方を再発明するため、電話、ウェブ会議、対面での会議などのビジネス音声コミュニケーションを録音・録画し、MiiTelで文字起こし、話し方解析、感情分析、出現単語トレンド分析、生成AI議事録作成などのAI解析を行っている。これらのAI解析によって、①商談の蓄積による商談状況の把握・共有、商談成功・失敗要因の特定、②議事録の自動作成、営業活動の分類・共有などによる業務の効率化、③スキルレベルの可視化、セルフコーチングによる成長などによるコミュニケーションスキル向上などの価値を提供している。(図1参照)

図1:MiiTelの活用シーンと提供価値(出所:RevComm提供資料)

 顧客からは、「ゆっくりと適度な間をとって会話するなど営業成績が良い社員の特性を定量的に可視化し、話し方の速度や対話の回数に着目してこれを横展開することで、アポイントを取り付ける率が31%アップした」「通話料・オプション代等を含め、月額2万円程度/IDで、AIによる音声のテキスト化・自動要約、応対品質の評価・分析ができ、応対品質向上と業務効率化が図れた」などMiiTelの導入効果を実感したというコメントをいただいている。

ビジネスやサービスの内容詳細

 当社は、「MiiTel Phone」や「MiiTel Meetings」などの提供を通じ、2.5億回を超える電話・オンライン会議などの音声コミュニケーションデータを保有し、これを音声認識技術の向上に活用している。また、当社の音声認識モデルは、一言一句を正確に音声認識できる、フィラー(えー、あー、えっとー)や言い淀みも正しく認識できるという特徴を持っている(図2参照)。2023年11月に自社で調査した結果であるが、ビジネスにおける電話、オンライン会議において、他社のモデルにおいては認識率が60~80%台のサンプルが大半であったが、当社の音声認識モデルにおいては90%以上の認識率となったのが全体の約9割前後であった。このことから、ビジネス領域に特化した会話において、当社の音声認識モデルは実用に十分耐えうると考えている。

図2:RevCommと他社の音声認識モデルの比較(出所:RevCommホームページ)

 

取り扱うデータの概要とその活用法

音声コミュニケーションデータ(電話録音データ、ウェブ会議録画データ、対面会話録音データ)
通話・会議の相手データ(セールスフォースやキントーンなどから収集)

 

事例の特徴・工夫点

価値創造

 MiiTelの主な価値は、会話ビッグデータの活用による売上向上とコスト削減である。売上向上につながるのは、営業におけるアポイント率や成約率の向上、顧客満足度向上、会話の質の向上などである。一方、コスト削減は、教育コストの減少、効率的なコミュニケーションによる電話をかける回数の減少、会話記録の自動作成などによるアフターワークの減少によってもたらされる。

 会話データを分析して分かったのは、相手が話すスピードと同じような速度で話をすると顧客満足度が向上することである。話す速度の重要性をあらためて認識した。また、動画を見る速度に関しては、1.75倍がちょうど良いと感じる人が多いことも分かった。昔は、一般的に利用されている動画閲覧サイトの再生速度の選択は1.5倍の次は2倍であった。動画閲覧サイトの1.75倍という再生速度の導入に関しては、当社も貢献していると感じている。

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

 コロナ禍の際にユーザ数が1ヵ月で2~3倍に増加した。それから顧客の増加に伴い、10個程度のデータ登録を想定していた項目に数百個から千個を超えるほどのデータを登録するような、設計時には想定していなかった用途で活用される顧客がおられる事態が発生した。このため、サーバーのスケールアウトや機能のアップデート、顧客対応に追われるなど対策に苦しんだ。

重要成功要因

 営業と技術、さらに技術の中でも分野が異なる社員がお互いをリスペクトする文化が育ったように感じていたが、コロナ禍を乗り越えることで現場の一体感がさらに高まった。この壁を乗り越えたからこそ、現在の会社がある。また、音声コミュニケーションデータを中心に、自分達でしかできないことに特化したことも良かった。例えば、ビデオ会議サービスは他社製品と連携する、生成AIの基盤モデルは自社で開発するのではなく世界的に最も性能の良い製品を活用するなどである。また、ビジネスを大きくするために、国内外の通信キャリア、他のSaaS製品を提供する企業、システムインテグレーター等とコラボレーションした取り組みを展開している。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

 当社は音声コミュニケーションにはこだわっており、クラウドPBX、音声解析エンジン、Webアプリ、Mobileアプリなど音声コミュニケーションに関わる技術は全て自社で開発している。開発にあたってメリットが高い場合、オープンソースも積極活用している。

 筑波大学との共同研究で、音声感情認識も実装している。音声とテキストの両方を利用して感情の推定を行う、独自開発の感情認識エンジンを運用している。感情のポジティブ・ネガティブの度合いは、色で表示している。(図3参照)

図3:音声感情認識エンジンの感情推定結果(出所:RevComm提供資料)

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題、挑戦

 短期的には、他のプレイヤーに真似されにくい独創的なアイデアや技術をできる限り短期間で実装し、市場での優位性を確保すること。中長期的には音声コミュニケーションデータの高度な分析により、AIが得意な膨大なデータの解析による新たな気づきの発見と、人が得意な「人が人を想って取り組む仕事」のように、人間とAIが仕事を分担し、顧客企業の業務改革を支援したい。また、営業の効果を高めるためにアプローチすべき顧客の提示など経営判断のお役にも立てるようにしたい。

技術革新や環境整備への期待

 スタートアップは行政との対話の機会が少ないように感じる。スタートアップの立場で考えると、新しく開発したサービスが急な制度変更に対応しなければならないといった事態に陥ることは避けたい。また、行政の抱えている課題や目指したい方向性がわかれば、スタートアップ企業の立場から革新的なアイデアを提供したり、サービスや製品を開発できる可能性がある。このため、イノベーション企業やスタートアップ企業と行政側が積極的に意見交換を行える場が増えるとよい。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

 コスト削減や生産性向上という顧客の業務課題解決を通じ、生産年齢人口減少時代における人材不足の解消、多様な働き方の実現といった社会課題解決に貢献していきたい。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 Horizontal、Vertical、Parallel、Globalの4つの方向で成長を考えている。Horizontalでは、カバーする音声コミュニケーションのマーケットを電話、Web会議、対面会議以外にも増やしたい。コールセンター向けのMiiTel Call Centerなどの提供はこの線に沿ったもの。Verticalでは、顧客のニーズに寄り添う形でサービスの高機能化を図りたい。Parallelでは、APIやSDK注3など開発向けサービスの提供によりビジネスアプリケーションの中にMiiTelを組み込んで使えるようにするなど他社との連携を図りたい。Globalでは、すでにインドネシアで約3年間事業を展開し、導入企業約300社の事業に成長しているが、このような海外展開も強化したい。

注3:APIはApplication Programming Interfaceの略語。アプリケーションやソフトウェア同士が情報をやり取りする際に使用されるプログラミング上の窓口のこと。一方、SDKはSoftware Development Kitの略語。ソフトウェアの開発を容易化するプログラムや API、サンプルコード、開発ドキュメントなどをひとまとめにしてパッケージ化したもののこと。

 

本記事へのお問い合わせ先

株式会社RevComm 広報担当

e-mail : pr@revcomm.co.jp

TEL:03-4405-4621

URL : https://www.revcomm.co.jp/​​​​​​​