更新日 2019年 6月26日
IoT導入のきっかけ、背景
ソフトバンクは携帯事業者として通信のパーソナル化を進め、誰が・いつ・どれくらい通信を使用したかに基づく、きめ細かな認証課金システムを構築・運用してきた。
この通信のパーソナル化で培った技術・経験を、電力のパーソナル化、特にモビリティ(移動)への充電環境に展開することができるのではないかということで、ソフトバンクでは、EV車両を対象に、誰が、いつ、どこで、どのくらい充電したかを把握し、使った(充電した)分だけ、電気料金を支払うことを可能とする独自の充電・認証システム「ユビ電」を発案した。この「ユビ電」を事業化すべく、ソフトバンクの社内ベンチャー提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」に本企画を提案し(最優秀を受賞)、開発をスタートした。
この「ユビ電」を適用した事業として、2015年に奈良県高市郡明日香村の超小型モビリティレンタルサービス事業「MICHIMO」への協力(現在商用サービス中)に続き、ソフトバンクグループ傘下のPSソリューションズにより、香川県小豆郡土庄町豊島における電動二輪車を活用したパーソナルモビリティのレンタルサービス事業「瀬戸内カレン」を2016年に開始した。また、2019年4月には、充電環境の事業を推進するために、ユビ電事業をソフトバンク株式会社よりカーブアウトし、ユビ電株式会社を設立した。
注)本記事は、ソフトバンク株式会社の関係会社で、2017年10月17日の取材当時に本システムの開発を行っていたPSソリューションズ株式会社への取材を基に執筆。
IoT事例の概要
サービスやビジネスモデルの概要
- 2人乗り小型EVや電動二輪車を充電プラグにつなぐと車両が特定され、日時、充電量などのデータをLTE網経由でクラウドに送信する。
- 小型EVや電動二輪車から送られる充電残量の他、位置情報や運転状況により、走行軌跡や急ブレーキやコースアウトなどといった運転状況、充電残量により走行可能な範囲を把握することができる。
内容詳細
- EVと充電プラグ側の双方に認証のための機器を取り付け、充電プラグにつなぐと、PLC(電力線通信)技術を参考に独自開発したしくみにより認証情報が交換される。
- 認証が確認されると充電を開始し、クラウドサーバーに送信された充電状況や充電履歴をタブレット端末等で見ることができる。
- 電圧等さまざまな電源供給条件に対応。将来的には電力カラーリング(*1) のような電力供給元に基づく課金サービスも想定している。
(*1) : 電力の供給元がどこかを示す技術。この電気は〇〇村の水力発電で作られた電気であることなどが分かるようになる。利用者は、「安い電気」もしくは「クリーンな電気」など利用シーンに応じて様々な供給元の電力を選択できる。
概要図
「ユビ電」は、独自の個体認識技術を用いて、プラグを挿すだけで被充電体の識別子を読み取って認証し、クラウドシステムと連携して何にどれだけ電気が使われているかなどのエネルギー利用情報が把握可能な、次世代エネルギーライフスタイルを実現するソリューションである。普通の電源アウトレットに簡単な仕組みを付加することで認証技術を実装でき、電気エネルギー利用のコントロールドオープンな環境を提供する。
取り扱うデータの概要とその活用法
バッテリー残量、GPSによる位置情報、地形の高低差等のデータ
事業化への道のり
苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間
- 充電時の認証方法の開発。簡単で電力提供側に負担の少ないしくみが必要であった。
- 本事業にあたり、飲食店等でスマートフォン等向けに電力を提供する案件を手掛け、実際の電力利用シーンに関する経験を参考とした。
技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの
- 認証メカニズムはPLC通信技術を参考に独自開発
- クラウド上のIoTプラットフォームを利用
今後の展開
現在抱えている課題
-
普及に向けたコストのさらなる改善
-
海外への展開、特にASEAN諸国への展開
将来的に想定する課題、強化していきたいポイント
誰でも、いつでも、どこでも、というモビリティに関するIoTシステムの普及には、通信量は少ないもののリアルタイムで常に途切れることない安定した通信基盤が重要性であることを改めて認識。その観点から第5世代モバイルに期待。
将来に向けて考えられる行動
- 電力提供側の設備に負担をかけることなく、誰でもどこでも手軽に充電できる(商用AC電源の利用等)ことをめざしたさらなる技術開発
- 海外(特にアジア諸国)での提供を考慮した技術開発および事業展開の検討
- EVへの充電・認証システムの搭載に向けた、自動車メーカーとの連携の模索
連携を含めた強化分野
モビリティに関わる業界、企業との連携。特に自動車メーカーとの連携