掲載日 2018年08月21日
清水建設株式会社
清水建設株式会社

清水建設株式会社

【提供目的】
  • コスト削減
  • 事業・業務プロセスの改善
  • 最適経路・プロセスの選択 

【活用対象】

  • 企業顧客
  • 自社
  • パートナー企業含めたグループ内

IoT導入のきっかけ、背景

 建設業界では、人口減少による人手不足に加え、高年齢層を中心に熟練技能労働者の大量離職が懸念されている。建設技能労働者数は2014年度で343万人であるが、2025年度までに128万人が離職すると予測されており、2025年度に必要と考えられる328~350万人の技能労働者を確保するためには、女性を含む若者を中心に新規入職者を90万人確保するとしても、10年以内に10%(注1)の省人化が必要となっている。さらに、建設現場は危険や重労働といった3Kイメージが強く、苦渋・反復作業の軽減や、賃金改善、休日拡大などの処遇改善が喫緊の課題となっている。
 そこで当社は、国土交通省が生産性革命元年と定めた2016年初頭に、これら喫緊の課題を解決するため、自律型ロボットと情報化施工を軸とする新時代建築生産システム「Shimz Smart Site(シミズ スマート サイト)」の開発に着手した。
シミズ スマート サイトは、建築現場(サイト)における主業務である建築作業、現場管理を、自律型ロボットおよび統合管理システムに基づき実施するもので、BIM(注2)データに基づく建築現場での情報化施工を実現することにより省人化を実現する。建築現場では何千何万の作業プロセスがあるが、その中から資材搬送、溶接、天井施工についてこの作業を行う自律型ロボットを開発し、実証実験によって75~79%の省人化が可能であるという試算を得ている。また、このロボット化により建築現場における苦渋・反復作業を軽減することも可能となる。
2018年に関西の高層ビル工事にて本システムの総合的な実証を行い、2019年度末までに全社展開を図る予定である。また、他の建築作業についてもロボット開発を行い、工事全体での省人化率の向上を計画している。

注1:2016年9月12日に開催された政府の「未来投資会議」で、建設現場の生産性を20%向上する方針が打ち出され、現在はこれが目標となっている。
注2:Building Information Modelingの略称で、建築物に関する情報のモデリング手法。典型的には、3次元の建物のデジタルモデルに、資材や仕上げ、コストなど管理情報などの属性データを追加し、コンピューター上で建築物の完成形をモデリングする。建築の設計はもとより、施工から維持管理までのあらゆる工程で活用する。

 

IoT事例の概要

サービス名等、関連URL

新時代建築生産システム「Shimz Smart Site(シミズ スマート サイト)」
 

サービスやビジネスモデルの概要

 シミズ スマート サイトは、建築現場作業の人による建築作業、現場管理作業をロボット化と現場情報データベース化により、省人化・生産性向上・労働環境改善を目指すものである。

 
シミズ スマート サイトの開発コンセプト
 

内容詳細

(1)シミズ スマート サイトでの建築工事は以下のように進められる。

  • 基礎工事終了後、建物をすっぽり覆う全天候軽量屋根「全天候カバー」を組み立て、その中に設置された新型クレーン(Exter)が鉄骨の柱・梁を順に所定の位置に吊り込む。
  • 柱溶接ロボット(Robo-Welder)が柱を溶接しながら躯体工事を行う。
  • 現場に搬入された資材は、夜間に資材搬送ロボット(Robo-Carrier)が作業階に搬送・仮置きするとともに、作業場所までの搬送を行う。
  • 仕上げ工が最終的な取付作業に専念することができ、生産性が向上する。
  • 下層階からは天井施工ロボット(Robo-Buddy)が最終工程となる天井、床を仕上げていく。

シミズ スマート サイトの概念図

(2)作業管理は以下のように進められ、情報化施工を実現する。

  • 作業者のタブレット操作によって統合管理システムから作業指示が送信され、この指示に基づいて各ロボットは自律的に現場内を移動する。
  • 各自律型ロボットにはAIが搭載されており、画像センサーやレーザーセンサーで自己の所在位置や施工対象物、施工部位を認識しながら自律的に移動・作業を行う。
  • 稼働状況や作業結果は統合管理システムにリアルタイムに記録・蓄積され、タブレット画面上で確認する。

自律型ロボットによる作業と作業管理作業イメージ

 

天井施工ロボット(Robo-Buddy)

資材搬送ロボット(Robo-Carrier)

溶接ロボット(Robo-Welder)

  • シミズ スマート サイトを30階建、基準床面積3000m2クラスのビルに適用した場合、柱溶接、資材搬送、天井施工の作業の省人化率の試算では、柱溶接作業で79%(1150人)、資材搬送で75%(2700人)、天井施工で78%(2100人)、合計6000人近くの省人化が可能であるという試算を得ている。

取り扱うデータの概要とその活用法

  • 位置情報
  • 稼働情報
  • 画像情報

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • 製造業の自動化・ロボット化とは異なり、自身で解決しなければならない建築現場ならではの課題がある。
    ①作業プロセスの多さ(数千~数万)、多岐に亘る作業、時々刻々変化する現場の状況を見た上で作業を行う必要があり、人による作業が非常に多く、作業をパターン化しづらい。
    ②造る対象である建物が非常に大きく、製造業と異なり一品生産である。また、工事期間が長く、実験や実証などが簡単には行えない。さらに、実証においても実際と同レベルの安全衛生面の考慮が必要など、多くの制限が伴う。
  • 自動化(ロボット化)開発対象は、工事全体の作業の中でも約半分を占める設備、仕上に関わる作業プロセスとし、中でも危険、苦渋作業が伴う作業から溶接、資材搬送、天井施工を選定した。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

他分野の最先端技術を融合し、新しい付加価値を創出した。

 

今後の展開

現在抱えている課題、将来的に想定する課題

  • 危険を伴いやすい作業であるため、安全衛生を十分に配慮する必要があり、人との接触・やりとりを極力避けるべくロボットの自律稼働を重視した。例えば、障害物センサーや段差を検知できるセンサーを搭載している。
  • 建築工事は数多く(数千~数万)の作業プロセスがあり、工事全体(54万人)に対する省人化率は1.1%に留まるものの、3つの自律型ロボット開発で得た共通的な要素技術、ノウハウを他の作業に展開し、自動化率・省人化率の向上を図る計画である。

強化していきたいポイント、将来に向けて考えられる行動

  • 部分的な実証を積み上げ、知見の収集、改善のサイクルを回してきたが、2018年関西の建設案件にて総合的な実証を行う予定である。
  • 情報のデジタル化およびBIM化の進展とともに、それらと連携する本システムは、より大きな効果を発揮できるものと考えている。
  • 溶接、天井施工、搬送のロボット化開発では、認識、計測、判断、制御といった他の作業のロボット化につながる要素技術を開発できたと考えている。今後は他の作業のロボット化に展開し、工事全体の省人化率を向上させる予定である。
  • また、各ロボットから得られる情報はデータベースとして蓄積される。このデータを基にロボット自身が学習し、進化するように高度化する予定である。

将来的に展開を検討したい分野、業種

 当面は自社内の展開を図るが、建設業界全体の課題解決につながる技術開発であり、将来的には他企業にも利用頂くことを考えている。

 

本記事へのお問い合わせ先

清水建設株式会社 生産技術本部