掲載日 2017年12月04日
ミサワホーム株式会社

ミサワホーム株式会社

【提供目的】
  • 収集情報を活用した付加顧客サービス提供 
  • 顧客へのサービス対応・サービス品質向上
  • 新たな顧客層の開拓、マーケティング
  • 故障や異常の予兆の検知、予防
  • 故障や異常への迅速な措置
  • 故障や異常発生後の最適かつスムースな事業継続

【活用対象】

  • 自社の複数部門あるいは全体で活用
  • 一般顧客
  • 社会全般を対象に活用(復旧サポートの迅速化)

IoT導入のきっかけ、背景

 開発のきっかけは、2011年の東日本大震災後に当社が行った被災調査に遡る。被災エリアが広域であったため、すべての建物の安全性確認に1年近くの時間を要した。また、この調査の際に新たな発見もあった。気象庁発表の震度が同じ地区の同種の住宅であっても、被災の程度が異なっていた。戸建住宅は、地盤の状態や工法、間取りの違いによって建物の揺れ方が異なる。つまり、地層や建物構造の違いによって、被災の程度が異なっていたのである。
 このような気付きから、個々の建物に入力される地震波を測定し、さらに建物個々の構造を加味したリアルタイムかつ住戸毎の被災度判定を実施することにより、被災後すぐに安全性を確認できることはオーナー様の安心につながると考えた。
 そこで、戸建住宅向け被災度判定計のIoT化の開発をスタートし、2015年にGAINET(ガイネット)の販売を開始した。同種のサービスとしては日本初であった。気象庁などの地震速報や警報が地域全体への情報発信であるのに対し、GAINETは住宅個々のリアルタイム震度や被災度判定を住む人に見える化する。また、クラウドに収集した当社の戸建て住宅の個々の被災状況を確認し、被災度に応じた復旧サポートを迅速に行うこととしている。熊本地震ではご自宅の安全性が確認できないため、長期間車中泊を行うようなケースが課題となったが、このサービスを導入すると、帰宅判断の迅速化が期待できる。
 

IoT事例の概要

サービスやビジネスモデルの概要

  • 住宅基礎部分に設置した計測部の3軸の加速度センサーで揺れを感知し、表示部およびクラウドサーバーへ送信。
  • 1棟々々それぞれの建物情報から構造モデル化し、測定した実際の揺れデータを掛け合わせることによりその被災度を判定し、リアルタイム震度や住戸の被災度ランク(建物1~5、地盤1~3)を表示部に表示(警報も含む)。住む人が職場や学校など遠隔地にいる場合は、スマートフォンやパソコンにより判定結果を確認できる。
  • クラウドサーバーに測定データ、被災度データを集約し、対象住宅の安全性を確認。被災した場合は状況に応じて個別のきめ細かな復旧サポートを実施。
  • 新築時にオプションとして販売。リフォームによる設置も可能。
     

内容詳細

  • バックアップ電池を搭載しており、停電時にもデータ計測、データ送信が可能。また、一定規模の地震後すぐに被災度データを送信するしくみとしている。
  • P波(初期微動)を感知してS波(主要動)を予測する機能があり、直下型地震ではいち早く警報を知らせることができる。
  • 設置されたお客様からは、実際の地震発生時に得られる情報と安心感に対して高い評価を得ている。

概要図

取り扱うデータ

加速度センサーデータ

 

事業化への道のり

苦労した点、解決したハードル、導入にかかった期間

  • 普及に必要なコストの実現。戸建住宅向けであるためコストを下げ、普及台数を増やすことを重視。
  • そのため、加速度センサーを建物の基礎(地震波の入力を測定)と上部構造(地震波に対する建物の応答を測定)にそれぞれ設置して同期する方式ではなく、加速度センサーを基礎のみに設置して地震波の当該建物への入力のみを測定することとした。そして上部構造の揺れは、これまで数多く実施してきた振動実験の結果を活用することとした。具体的には、当該建物ごとの上部構造の質点系解析モデルを作成し、地震波によって当該建物がどのように変形するかを計算し、得られた計算値と実験時に確認済みの変形角(建物が変形する角度)に応じた被害状況を照合し、建物のダメージ状況を判定することとした。

技術開発を必要とした事項または利活用・参考としたもの

  • 加速度センサーは外部のものを使用し製品化。
  • ネットワークはKDDI(株)のLTEを利用し、5年間の通信料込みでサービスを販売。

 

今後の展開

現在抱えている課題

  • 設置数を大幅に増やすための取り組みが必要。
  • 得られたデータの社会的利活用の検討。情報の扱い、社会的影響への考慮が必要。
  • 建物の構造種別により構造モデル化及び被災度判定の閾値が異なるため、当面、被災度判定のアルゴリズムの適用範囲が当社の建築物に限られる。

将来的に想定する課題、強化していきたいポイント

  • 自治体との連携、他のデータとの連携可能性の模索。現在、総務省委託事業で「地震情報・被震度情報によるビッグデータを活用した防災ネットワークのモデル事業」において徳島県、明治大学と共同で、住宅、公共施設等多種多様な建築物における防災ネットワークの稼働実証を実施中。
  • 設置台数を増やすことにより、気象庁の地震情報を補完できるようになること

将来に向けて考えられる行動

  • 省庁、自治体への働きかけ。省庁、自治体の各種施策との連携の模索。
  • お客様への説明方法、販売方法の見直し。設置されたお客様の満足度を販売につなげる。

連携を含めた強化分野

  • 当社の技術やデータの利活用に関しては前向きに考えているものの、社会的な理解やルールの再整備が必要と感じている。まずは設置台数の増加に注力している。
     

 

本記事へのお問い合わせ先

ミサワホーム株式会社 コーポレートコミュニケーション課

URL : http://www.misawa.co.jp/bousai/misawa-lcp/index.html

TEL : 03-3349-8088